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大統領再選を目指すなら 大阪大名誉教授・坂元一哉

大阪大名誉教授・坂元一哉
大阪大名誉教授・坂元一哉

先月25日、米国のバイデン大統領がビデオ動画を使って、インターネット上で、来年に行われる次期大統領選への再選出馬を正式に表明した。再選されれば82歳、2期目の大統領としても史上最高齢となる。

バイデン氏の高齢と活力不足、認知能力の低下を懸念して、米国民の多く、与党の民主党支持者でも5割以上が「出馬を見合わせる方がいいのでは」と考える中、敢(あ)えて出馬する理由について、バイデン氏は「4年前、われわれは米国の魂をかけた闘いの中にいると言った。今も同じだ」と述べたうえで、「仕事をやりとげよう」と呼びかけた。

なんの「仕事」なのか、具体的なところは説明がないのだが、おそらくは、前回の大統領選に不正があったとしていまも敗北を認めていないトランプ前大統領が、それでも次の選挙で共和党の候補者になりそうな状況を見て、彼ともう一度戦って勝つことを「仕事」と思い定めているのだろう。

そうだとすれば、この「仕事をやりとげよう」という言葉は、民主党支持者にとっては魅力的なスローガンになるかもしれない。だが、民主党支持者以外の米国民にとっても多少なりとも魅力的なものにするためには、この「仕事」という言葉の意味に、前回2020年の選挙でバイデン氏に史上最多の一般得票を与えた米国民が期待したものも、含まねばならないだろう。

すなわち、大統領が過激で攻撃的なトランプ氏ではなくて、静かで落ち着いた熟練の政治家、バイデン氏ならば、いまの米国社会の極端な分断を解消し、米国民を再び団結させてくれるのではないか、という期待である。

バイデン氏がこの期待を含めた「仕事」をやりとげるということならば、その言葉に説得力を持たせるために、現在低迷しているバイデン政権の支持率を上昇させる必要がある。現在、世論調査では「政権を支持しない」が、「支持する」を20ポイントほど上回っている。また、米国が正しい方向に進んでいると考える米国民は少数派にとどまっており、最近のある調査ではわずか13%に過ぎなかった。来年11月の大統領選本選の投票日までにこの現状を変えることができるかどうかが、バイデン氏にとっての勝負の分かれ目となるだろう。

いずれにせよ来年の大統領選は、21世紀の米国の行方を占い、世界のありようにも多大な影響を与える選挙になると思われる。

内政外交のさまざまな課題についてじゅうぶん議論し―前回の選挙ではそれが不足していた―、だれが勝つにしても、大統領選が終われば、公平を重んじる米国らしさを取り戻し、一致団結して諸課題に取り組んでほしい。

次の大統領選が米国にとって、世界の平和と繁栄をリードする国であり続けるために必要な選挙だったと、後世の歴史家が振り返るようなものになることを望みたい。 (さかもと かずや)

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