カンヌ国際映画祭コンペティション部門で、役所広司さん(67)がヴィム・ヴェンダース監督(77)の「パーフェスト・デイズ」での演技により男優賞を受賞した。「Shall we ダンス?」などの映画で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を3度受賞し、海外での受賞も多い名優に、新たに大きな勲章がもたらされた。
役所さん演じるトイレ清掃員の平山という男の、日々の小さな揺らぎを丁寧に追った同作品。淡々と過ぎていく日々に満足しながら、平山の毎日は常に新鮮な小さな喜びに満ちている。あるとき彼は思いがけない再会を果たし、それが彼の過去に少しずつ光を当てていく。平山のもとに突然訪れる姪役に新人の中野有紗さん、その母で平山の妹に麻生祐未さん、平山と奇妙なつながりをもつホームレスにダンサーの田中泯さん、同僚の清掃員に柄本時生さんらがキャスティングされている。
役所さんは映画祭で25日に上映された同作品がスタンディングオベーションを受けた後、「今日みたいな温かい拍手を受けて、ああお客さんが喜んでくれてるんだ。良かったな。と単純に思いました」と笑顔を見せていた。また、ヴェンダース監督については「常に楽しそうにしていたので、その姿勢がキャストを励まし、大きな演出になっていた」と話した。
役所さんは昭和31年、長崎県出身。映画「Shall we ダンス?」「うなぎ」「三度目の殺人」など数多くの映画に出演し、テレビドラマでも「宮本武蔵」「三匹が斬る!」「いだてん~東京オリムピック噺~」など出演作多数。平成24年、紫綬褒章。
一方、ヴェンダース監督は昨年、第33回高松宮殿下記念世界文化賞(演劇・映像部門)を受賞しており、日本との縁を生かした作品で、役所さんとともに今年のカンヌの主役へと躍り出た。
国際映画祭の常連で、これまでも「ことの次第」がベネチア国際映画祭金獅子賞(最高賞)、「パリ・テキサス」がカンヌ国際映画祭パルム・ドール(最高賞)、「ベルリン・天使の詩」がカンヌ国際映画祭監督賞に輝いている。
ロードムービーの名手で、「都会のアリス」「まわり道」「さすらい」なども製作。親日家としても知られ、特に日本を代表する映画監督、小津安二郎に傾倒。小津監督へのオマージュ作品「東京画」やデザイナー、山本耀司(やまもと・ようじ)氏へのオマージュ作品「都市とモードのビデオノート」を製作している。
「パーフェクト・デイズ」は、渋谷区内に隈研吾(くま・けんご)氏や安藤忠雄氏といった世界で活躍する建築家らがデザインしたスタイリッシュで清潔な公共トイレを設置する「THE TOKYO TOILET」プロジェクトの一環として製作された。昨春、ヴェンダース監督は同作品のシナリオハンティングのため、11年ぶりに来日。安藤氏らがデザインした公共トイレを実際に視察した監督は「トイレは英語でレストルーム(休む場所)というが、今回実際に改修されたトイレを見て、真の意味で休める場所だと感じた」と語っていた。
同作品の日本公開は未定。