郵便ポストも観光名所も「緑茶色」に 静岡・島田市がユニーク「緑茶化計画」

静岡県島田市が進める「島田市緑茶化計画」により、市内のあちこちが緑色に(市提供など)
静岡県島田市が進める「島田市緑茶化計画」により、市内のあちこちが緑色に(市提供など)

新茶の季節を迎え、静岡県のお茶どころ、島田市が一風変わったシティープロモーションを進めている。題して「島田市緑茶化計画」。「地球上でもっとも緑茶を愛する街」を掲げ、郵便ポストや観光名所など市内のあちこちがイメージカラーの「緑茶グリーン」に。特産品の振興を産業面だけでなく、地域の活性化にも生かそうとの試みだ。

駅や市役所でも

見慣れた赤い郵便ポストが、市内の一部で緑茶グリーンに塗り替わっていた。市内を流れる大井川では、世界一長い木造歩道橋「蓬莱(ほうらい)橋」が緑色にライトアップ。橋のたもとには物産販売所「蓬莱橋897・4(やくなし)茶屋」が置かれ、緑茶関連商品が並んでいる。

JR島田駅や市役所にも緑色のパネルが点在。市内に静岡空港があることにちなみ、県内に本社を置く地域航空会社「フジドリームエアラインズ(FDA)」の機体が緑茶化されたこともある。

街の魅力や強みを演出し発信するシティープロモーションとして、市がユニークな緑茶化計画を始めたのは平成27年。平成の大合併による市制施行10年を記念した、市民参加型の地域振興プロジェクトだった。

人口減で生産減

島田市は静岡県中部、人口約9万6千人の都市。市の中心部を大井川が流れ、江戸時代から東海道の宿場町として栄えた。島田、牧之原、菊川3市にまたがる牧之原台地でのお茶の生産のほか、静岡空港(島田、牧之原両市)やSL「トーマス号」が走る大井川鉄道などで知られる。市の木はもちろん、お茶。

国の農林水産統計によると、「生葉」と「荒茶」を合わせた静岡県のお茶産出額は令和3年、268億円で全国1位。全国の合計783億円の3分の1を占める。中でも島田市は2年、35億円と牧之原市の37億円に次ぎ県内で2番目に多い。

ただ、生産量は減少傾向にあり、近年は人口減少の影響もあいまって、需要の回復は容易ではない。日本一の静岡でも、生産と需要の維持や回復は大きな課題となっている。そこで島田市は、お茶産業の振興に力を入れる一方で、地元の特産であるお茶を茶業そのものとは異なる側面から振興できないか考えたという。

市民に緑茶をもっと好きになってもらうことや、「緑茶化された緑の街」にすることから始め、国内外に成果をPR。さらに、こうして緑茶化されたコンテンツを軸に観光客の誘致を進め、ひいては緑茶の需要拡大を目指す戦略だ。

緑色やお茶を好まない人には厳しい環境とも言えそうだが、市の広報担当によると、「昔からお茶の名産地として市民に理解があり、特に反対意見などはない」という。

観光客増に貢献

緑茶化計画が始まってから、緑色のポストを珍しがった市民や観光客がSNS(交流サイト)を通じて世界へ拡散。新型コロナウイルス感染拡大により令和2年度、約151万人に落ち込んだ観光客は4年度、250万人を超えるまでに回復したとみられるが、市は緑茶化計画も貢献したとみている。

市シティプロモーション室の鈴木克典室長(51)は「PRとともに、プロジェクトの着地点をどこにするのかが重要となる」と指摘。茶業者と協力して緑茶そのものを楽しみたい層に向けた「コンセプトティー」を開発したり、菓子店にお茶を生かした商品開発を呼びかけたりしている。

計画の重要目標として、市は「市民の島田市への愛着や誇り(シビックプライド)の醸成」を掲げ、KPI(重要業績評価指標)としては市民への意識調査による計画認知度を採用している。

4年度の認知度は目標の85%に対し、実績は84・1%。今年度は86%を目指すという。

(青山博美)

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