花田紀凱の週刊誌ウォッチング

(926) 猿之助さん一家「心中」事件の謎、『文春』『新潮』が肉迫

週刊誌の記事を読むのが、これほど辛かったことはない。

市川猿之助さん一家、前代未聞の心中事件。

『週刊文春』(6月1日号)が「全内幕 猿之助〝心中〟『次の世で会おうね』悲恋と性加害」6ページ。

『週刊新潮』(6月1日号)は「殺人で逮捕!? 遺書に記された『最愛の人』とは!? 『猿之助』7つの謎」9ページ。

4月には「新・陰陽師(おんみょうじ)」で猿之助さんの宙づりを見たばかり。明治座公演も昼、夜、予約していた。

今後の歌舞伎界を背負って立つ役者だったことは間違いない。

それが、いったい、なぜ?

事件の概要は既に新聞やテレビで報じられている通りだが、両誌とも、その「なぜ」に迫って遜色がない。

セクハラ告発記事を掲載した『女性セブン』の発売が18日。前夜の様子を『文春』はまるで見てきたように書いている。

〈夜八時、リビングに集まった親子三人は猿之助が振る舞った蕎麦(そば)を黙々と口に運んだ。その後の〝家族会議〟で決まったのは、この食事が最後の晩餐(ばんさん)になるということだった。

「週刊誌にあることないこと書かれ、もう駄目だ。すべてが虚しくなった。全員で死のう。生きる意味がない。寝ている間に死ぬのが一番楽だろう」〉

捜査関係者からの情報としか考えられない。『文春』の取材力はさすがだが、捜査中の情報をここまで漏らしていいものか。

総じて『文春』の方が、書く手つきは温かい。まだ47歳。猿之助さんの再起を祈るばかりだ。

『文春』ではもう1本のスクープの方が問題。岸田文雄首相の長男、岸田翔太郎秘書官が、またまたやってくれた。

「階段に寝そべり、総理会見ごっこ 岸田一族『首相公邸』大ハシャギ写真」

G7成功で追い風の首相も頭が痛かろう。

『ニューズウィーク日本版』(5・30)、今週のスペシャルリポートは「愛犬の心理学」10ページ。

ねこもやってくれ。

(月刊『Hanada』編集長)

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