【ワシントン=坂本一之】バイデン米政権は新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」を通し、中国が経済や軍事で強める覇権主義的な動きに対抗していく考えだ。
IPEF閣僚会合では、半導体などのサプライチェーン(供給網)強化に向けた対策で合意。中国に重要物資の供給網で過度に依存することを避け、貿易制限などで経済的威圧を仕掛けられないようにする狙いもある。権威主義の中国に重要物資を依存することは、「経済の弱みを握られることになる」(外交筋)からだ。
バイデン政権は中国に関し、外交・安全保障政策の指針となる国家安全保障戦略で、「国際秩序を作り替える能力と意思を持つ唯一の競争相手」と位置付けた。
中国に対抗する経済圏を経済安全保障対策ともなるIPEFで構築。米技術が中国軍の能力を向上させないよう、半導体の対中輸出規制を導入し米国の軍事的優位性も維持する方針だ。
一方、IPEF交渉を牽引(けんいん)するレモンド米商務長官は米中経済の「デカップリング(切り離し)は追求していない」との立場も示す。バイデン政権は自国の脅威につながらない貿易は推進し、安定した米中関係を目指す。レモンド氏と米通商代表部(USTR)のタイ代表は、26日に閉幕したアジア太平洋経済協力会議(APEC)貿易相会合で訪米した中国の王文濤商務相とそれぞれ会談するなど対話維持も重視している。