両膝手術から221日 照ノ富士、我慢と覚悟の復活V

【大相撲五月場所(夏場所)14日目】〇照ノ富士(よりきり)霧馬山●=両国国技館(土谷創造撮影)
【大相撲五月場所(夏場所)14日目】〇照ノ富士(よりきり)霧馬山●=両国国技館(土谷創造撮影)

大相撲夏場所14日目は27日、両国国技館で行われ、4場所連続休場明けの横綱照ノ富士が、ただ一人2敗の関脇霧馬山を寄り切り、13勝1敗で6場所ぶり8度目の優勝を決めた。

最後の土俵際、のけ反りながら残る霧馬山ののど元を照ノ富士は右手で押し込み、土俵下まで吹き飛ばした。今場所最長となる1分9秒の相撲を制して6場所ぶり8度目の優勝。支度部屋に引き揚げてきた横綱は「素直にうれしいです」と小さな声で言った。

霧馬山に食い下がられ、なかなか良い形を作れなかった。勝機をつかんだのは、相手の寄りを一度こらえて左の上手を引いたとき。すぐさま右を巻き替え、胸を合わせて勝負を決めた。

昨年の秋場所を途中休場した後、10月に両膝を手術。3場所続けて全休する間、「将来を考えたら今でもやめたい。それでも一回、立ててしまった2桁優勝という目標がある。達成しないと満足しない」。プライドで自らを奮い立たせてきた。

負傷を繰り返してきた膝は、もう100%の状態に戻ることはない。上半身をしっかり鍛えて相手をつかまえ、ここぞの勝負では立ち合いで低く強く踏み込んで白星を重ねた。

3場所連続全休明けの優勝は平成元年初場所の横綱北勝海以来、34年ぶりだ。元北勝海の八角理事長は今場所の照ノ富士の評価を問われると、「最高でしょう。精神的にも横綱ですよ。よく頑張ってくれた」と賛辞を惜しまなかった。今、振り返れば、師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)の判断で春場所からの復帰を見送り、もう2カ月、時間をかけたことは正解だったといえる。

照ノ富士は「手術してから一日一日を無駄にしたくない思いでやってきた。気が抜けるときもあったけど、切り替えて頑張ってきて良かった。(自分の体は)いつ何が起こるか分からない状態。そういう思いで土俵に上がってきた」と語った。手術から221日、我慢と覚悟が実を結んだ。(宝田将志)

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