主張

長野立てこもり 銃規制のあり方問い直せ

長野県中野市で発生した立てこもり事件は、4人が犠牲となる最悪の結果となった。

殺人容疑で逮捕された青木政憲容疑者は高齢女性2人を刃物で刺殺し、長野県警の警察官2人を猟銃(散弾銃)で射殺したとみられる。

1人目の女性が襲われた犯行の目撃者の通報で駆け付けた警察官2人は、パトカーの至近距離から車内に銃弾を撃ち込まれた。有無をいわさぬ凶行で、避けようはなかったろう。

容疑者は迷彩柄の上下と帽子にサバイバルナイフと猟銃で武装しており、目撃者の問いかけには、「殺したいから殺した」と返答したのだという。

容疑者は県公安委員会から猟銃や空気銃など計4丁の所持許可を得ていた。谷公一国家公安委員長は「手続きに問題があったとの報告は現時点では受けていない」と述べた。では、こうした銃器犯罪を防ぐことはできないのか。

警察庁によると、令和3年末現在、全国で8万7973人が17万7719丁の銃刀法に基づく猟銃および空気銃の所持許可を受けている。これだけの銃が個人所有で現存しているということだ。

平成19年に長崎県佐世保市のスポーツクラブで2人が死亡した乱射事件を受けて申請時に医師の診断書の添付を義務付けるなど、銃刀法は規制強化の改正を続けている。だが、令和3年の「不許可等」は33件、「取り消し」は46件にとどまっている。

所持許可の「欠格事由」には一定の疾病、犯歴、アルコールや麻薬の中毒者などとともに「他人の生命、身体、財産、公共の安全を害し、または自殺をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者」という項目もあるが、現実的に適用は難しい。許認可の厳正化には限界がある。

銃刀法は、所持許可を受けた銃器を収納する堅固で特殊な錠前を付けた「ガンロッカー」の設置を義務付けている。盗難による犯罪を防ぐためだが、所持者自身による出し入れは自由だ。

猟銃の使用は狩猟や害獣駆除、スポーツ射撃に限られる。銃が自宅にある必要はあるまい。銃器の保管場所を都道府県の公安委員会や猟友会などに限定し、用途を明記して持ち出す案はどうか。厳しい銃規制は日本の良好な治安の根源である。この際、思い切った規制のあり方を検討してほしい。

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