SNSを通して、日々さまざまな「自撮り」写真が発信されている。写真映えのする食べ物や景色、仲の良い友人らとともにフレームに収まった人々の多くは楽しそうな笑みを浮かべているはずだ。その笑顔の裏には本当はどんな感情が渦巻いているのだろうか? 作家で劇作家の本谷有希子は新しい連作小説で、SNSとともに歩む現代人の複雑な心情を巧みにすくい上げている。
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SNS(交流サイト)の浸透で、誰もが気軽に発信できる社会となって久しい。新たな出会いや充足感を与えてくれる情報環境は、一方では孤独や焦燥感も連れてくる。