第十二章 荒地 五 (文・永井紗耶子)
思えば、恵まれて生きて来たのだ。生まれてこの方、食うに困ることはなく、好きなことをして生きて来た。他人(ひと)様からは、甘えだと言われても、それがどうしたと、跳ねのけて、柵(しがらみ)から逃れて来たのだ。
「罰が当たっているんやろうか……」
気弱の余りに空回る。しかし、これが罰などというのなら、冬の寒さに行き倒れた母子らは、一体、どんな罪があるというのか。
「それでも、歌を詠みたいのが人でございます」
思えば、恵まれて生きて来たのだ。生まれてこの方、食うに困ることはなく、好きなことをして生きて来た。他人(ひと)様からは、甘えだと言われても、それがどうしたと、跳ねのけて、柵(しがらみ)から逃れて来たのだ。
「罰が当たっているんやろうか……」
気弱の余りに空回る。しかし、これが罰などというのなら、冬の寒さに行き倒れた母子らは、一体、どんな罪があるというのか。
「それでも、歌を詠みたいのが人でございます」