日本の宇宙ベンチャー、アイスペース(東京都)は26日、着陸に失敗して月面に衝突したとみられていた同社の月着陸船の飛行データなどを解析した結果、高さ約5キロの地点から時速約360キロで墜落し、月面に衝突して大破したことが判明したと発表した。
同社によると、着陸船が月面からの高さを測るセンサーの測定高度を補正するソフトが誤動作し、実際の高さと着陸船が認識する高さに誤差が発生。着陸船がエンジンを逆噴射しながら月面に着陸し高さが0キロになったと認識した時点で、実際は高さ約5キロだった。
宇宙船は、その後もさらに降下が続いている異常な状態を検知。余剰の燃料を使って自動的にエンジンを噴射し、降下速度を抑制して高さを保とうとしたが、燃料は約1分で尽き、自由落下状態となって月面に墜落したとしている。
技術部門責任者の氏家亮CTO(最高技術責任者)は、東京都内の日本記者クラブで開かれた記者会見で、「着陸予定地点から約15キロ離れた月面に、クレーターの縁で崖のような激しい起伏が続く場所があり、そこを通過した際、激しい起伏の影響で高度センサーの補正ソフトが誤動作したようだ」と語った。
着陸の直前、当初の計画と異なる場所に着陸予定地点を変更したため、周辺の起伏データを用いた着陸シミュレーションを実施できていなかったという。
同社では、誤動作した補正ソフトについて設計を見直すとともに、月面の広範囲な起伏データを用いた着陸シミュレーションを追加し、別の高度センサーも併用することで、発生した問題を解決できると説明。これらの対策を施した上で、来年度に月着陸船の2号機を打ち上げるとしている。
同社の月着陸船は昨年12月11日、米スペースX社のロケットで米フロリダ州ケープカナベラル宇宙軍基地から打ち上げられた。月が地球を周回する軌道を飛び越え地球から約150万キロ離れた後、大回りの経路で約4カ月半の航行を経て月にたどり着いたが、今年4月26日に着陸に失敗した。