自分が構成したチームを自分が率いてボロボロの敗走…。球界でも滅多に見られない負のスパイラルが起きている。2018年9月に就任したゼネラルマネージャー(GM)職を昨季オフに辞任し、今季から監督専任で臨む楽天・石井一久監督(49)に対し、成績不振への批判の声が渦巻き始めている。
今季で監督3年目を迎える石井監督だが、楽天は41試合消化時点で15勝25敗1分けの借金10でパ・リーグの最下位に低迷。24日のオリックス戦(ほっともっとフィールド神戸)も九回裏に抑えの松井裕が紅林に逆転サヨナラ2ランを浴びて敗戦。今季2度目の5連敗だった。試合後、石井監督は「エラーの失点が続いているけど、それは仕方ない」と力なく語っていた。
チームが低迷すれば、普通ならば現場の監督ら首脳陣だけが矢面に立つのではなく、球団に対しても支援体制への批判が飛び交うものだが、今季の石井楽天に限っては事情が違う。なぜなら石井監督は2018年9月からチームの戦力編成を担うGMに就任し、その後の4シーズンにわたり、チーム造りの中心的な役割を担ってきた。つまり、球団と現場の両方の最高責任者だった石井監督におのずと批判は集約される。
石井GM時代の主な補強策を挙げると浅村を西武、鈴木大をロッテからフリーエージェント(FA)で獲得。大リーグでプレーしていた牧田(昨季で引退)も複数球団との争奪戦を制して涌井(中日)もロッテから金銭トレードで獲った。20年オフには田中将大(前ヤンキース)を8年ぶりに復帰させた。21年には巨人から炭谷を金銭トレードで獲得し、そのオフには日本ハムを自由契約となった西川遥も加入。名前だけを挙げていけば、巨人も顔負けの大型補強の連続だった。
しかし、費用対効果は今ひとつで監督就任初年度の2021年こそ66勝62敗15分けの3位だったが、昨季の2022年は69勝71敗3分けの4位。そして、今季も最下位に低迷。チーム打率2割9厘、121得点はリーグワースト。防御率3・36、159失点もリーグワースト。つまり投打ともに不振で、負けるべくして負け続けている。
こうなってくると4年前の自身の言葉がそのまま自分に跳ね返ってくる。2019年に3位の成績を残した平石洋介監督(現西武ヘッドコーチ)を当時の石井GMはわずか就任1シーズンで解任。理由は「僕のなかでは3位はBクラスと同じだ」。平石野球を否定する文面まで公開し、2軍のポストを提示したが、同監督は退団した。さらに2020年には三木肇監督も4位に終わると1年で解任。そして、自身がGM兼任で監督に就任した。
つまり、現状の石井監督の成績は自らが斬った平石&三木監督よりも悪い。なので、本拠地の楽天モバイルパーク宮城がある仙台の地元ファンからも「もし、石井GMならば石井監督は解任では…」という声まで沸き起こっている。
楽天の支配下選手(外国人選手を除く)の年俸総額は33億7250万円。これはソフトバンク、巨人に次ぐプロ野球12球団で3位。石井GMが行ってきた大型補強の〝成果〟だ。一方で選手会がアンケートした昨オフの契約更改での楽天の選手達の満足度は24・19%。12球団で最下位だ。どういうことか。移籍してきた選手達が高額年俸を得ている半面、チームの生え抜き、若手は待遇面で大いに不満を持っているという表れ。それが現状のチーム状態に直結していないか。
ビッグネームをかき集めたが、チームは勝てない。石井監督は今、石井GMの大失敗のツケを払っている…と指摘しても間違いではないはずだ。(特別記者)
植村徹也
うえむら・てつや 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。岡田彰布氏の15年ぶり阪神監督復帰をはじめ、阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。