大相撲夏場所13日目は26日、両国国技館で行われ、貴景勝は送り出しで明生を破った。
館内がざわめく一瞬の決着だった。前日に右脚を痛めた様子の平幕明生に対し、大関貴景勝は立ち合いで左に動き、相手をかわして送り出し。なりふり構わぬ注文相撲で8勝目をもぎとり、かど番を脱出した。
先場所、左膝を痛めて綱取りが消滅。途中休場を余儀なくされた。左をかばううちに右にも負担がかかったか。今場所は2日目から両膝にテーピングを大きく巻いて土俵を務めてきた。
師匠の常盤山親方(元小結隆三杉)は場所前の調整を貴景勝本人に全面的に任せた。大関は母校の埼玉栄高を訪れるなどして心身を整えてきたが、同高の山田道紀監督は「(仕上がりは)5、6割くらいでは。2割を精神力で持っていけるか。8割くらいの力を出せれば、そこそこ行くと思うけど…」とみていた。
貴景勝はいつもの押しを発揮できない中、立ち合いで駆け引きを交えるなどしながら1つずつ白星を手繰り寄せていった。本人は今場所、一度も取材に応じていない。常盤山親方によると、「部屋では(不安なそぶりなどは)全く見せない。マッサージなどでケアしながら普段と変わらずにやっていた」という。
14日目は関脇若元春戦が組まれ、千秋楽は横綱照ノ富士との対戦が予想されるだけに、ここでかど番を脱出できたことは大きい。「私もほっとしたけど、本人もほっとしていると思う」と常盤山親方。執念で大関の座を守った貴景勝は、取組を終えて下がると土俵の縁に両手をついた。(宝田将志)