【ワシントン=大内清】米連邦政府の債務上限の引き上げを巡るバイデン大統領と野党・共和党の〝チキンレース〟が袋小路に陥っている。上限引き上げが実現しなければ米国債がデフォルト(債務不履行)となる恐れがあるが、デフォルトとなるとされる6月1日まで1週間余り。2024年大統領選で再選を目指すバイデン氏は、世論の非難が自身に向くリスクと、共和党側に譲歩して歳出削減に応じた場合の経済への影響をてんびんにかけながら、着地点を探っている。
バイデン氏の交渉姿勢に明確な変化が現れたのは21日、先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)のために訪れた広島市内で行った記者会見での発言だ。共和党側との折衝で「1兆ドル(約138兆円)超の歳出削減を提案した」と明らかにしたのだ。
共和党は4月に下院で可決した法案で、債務上限引き上げの条件として、財政赤字の縮小に向け今後10年間で4兆5千億ドル(約620兆円)に上る歳出カットを要求している。バイデン氏が提示した「1兆ドル」はこれを大きく下回るものの、無条件での上限引き上げを主張してきた従来の立場からは大きな譲歩だ。