自治体の動物愛護センターは、飼い主が入院・死亡した際や野良犬・野良猫が出産した場合などに、犬や猫を引き取ることがある。それらの多くは新たな飼い主に譲渡されているが、千葉県は引き取り数、譲渡数とも全国で2番目に多い。
犬猫の譲渡では、動物愛護団体やボランティアが重要な役割を果たしている。動物愛護センターなどで行われている犬猫の譲渡会のほとんどは、行政と協力関係にある地域の動物愛護団体などが運営を担っている。また、多くの動物愛護団体などがホームページ上で保護している犬猫の里親を募集しているほか、メンバーの個人的なネットワークを通じて新たな飼い主を見つけている。
一方、千葉県では、動物愛護の推進や正しい飼い方の普及のため、平成20年度から動物愛護の推進に熱意と見識を有する県民に「千葉県動物愛護推進員」を委嘱し、増員を進めてきた。令和3年度末現在、72人が活動しており、自治体が引き取った動物の譲渡先のあっせん支援も担っている。
また、県動物愛護センターは、ホームページ上に犬猫を飼えなくなった飼い主と新たな飼い主を仲介するコーナーを設け、譲渡の円滑化に注力している。千葉県において多くの犬猫の譲渡が実現してきた背景には、こうした官民の取り組みの蓄積があるといえよう。
今後を展望すると、動物愛護団体などが犬猫の譲渡を仲介する数には限界があるのに加え、メンバーの高齢化に伴い徐々に活動を縮小している団体も見受けられる。引き取り手のない犬猫を減らすとともに、動物にかかる行政経費を削減していくためには、住民が犬猫を自治体に持ち込む事案を減らしていくことが求められる。
自治体が引き取った犬猫の約8割は飼い主が不明である。特に猫は繁殖力が強いため、住民が野良猫に餌をやることで一気に増えてしまい、自治体が動物愛護団体などと連携して捕獲し保護するケースが多い。そうした場合、衰弱している個体はやむなく殺処分されている。ペットの飼い主が自治体に犬猫を持ち込む事案については、飼い主の健康問題や経済的事情が主な理由となっている。
犬猫の殺処分は減少傾向にあるが、3年度は全国で1万4000頭もの殺処分が行われた。動物の繁殖力などに関する住民の知識不足や、健康状態や経済状況の見通しの甘さによるしわ寄せが動物に及ぶことがないよう、行政においては動物飼育に関する知識の普及啓発などの強化が必要である。
住民においては、ペットを飼おうとする際は正しい知識を得て十分に検討することが、飼うこととなった場合は動物愛護法に規定された、ペットがその命を終えるまで飼育する「終生飼養」の責任を全うすることが求められる。
(ちばぎん総合研究所上席研究員 薄井聡)