第十二章 荒地 三 (文・永井紗耶子)
昨年の凶作で、米の値は高くなっている。今年もこの有様(ありさま)では、商人たちは買い占めに走るだろう。となると、三河吉田とはいえども、米はさすがになくなる。
「飢える人も出るやもしれませんな」
木朶(もくだ)も同じように案じていた。
それからほどなくした八月のある日のこと。 突如として黒い雲が空一面を覆った。
昨年の凶作で、米の値は高くなっている。今年もこの有様(ありさま)では、商人たちは買い占めに走るだろう。となると、三河吉田とはいえども、米はさすがになくなる。
「飢える人も出るやもしれませんな」
木朶(もくだ)も同じように案じていた。
それからほどなくした八月のある日のこと。 突如として黒い雲が空一面を覆った。