重力波の検出目指すKAGRA 3年ぶりの観測へ

宇宙の謎を解明する鍵を握る「重力波」の検出を目指す大型観測施設「KAGRA(かぐら)」(岐阜県飛驒市神岡町)が24日深夜、米国の施設との共同観測を開始する。コロナ禍で機器の調整が遅れるなどの影響があったが、防振性の向上などで感度を高め、3年ぶりに本格的な観測をスタートする。

重力波は、巨大な質量を持つブラックホールや中性子星が合体する際などに生じるわずかな時空のゆがみ。アインシュタインが約100年前に存在を予言し、物質の起源や宇宙の進化を調べる方法として注目されている。重力波を世界で初めて検出した功績で、米国の観測施設「LIGO(ライゴ)」チームの3氏が2017年にノーベル物理学賞を受賞した。さらに欧州の施設「Virgo(バーゴ)」も既に重力波を検出している。

なるべく離れた3つ以上の地点で重力波を検出できれば、観測データの時間差から重力波が来る方向を調べることができる。ノーベル物理学賞の受賞者で、観測チームを率いる東京大宇宙線研究所の梶田隆章教授は「KAGRAが東アジアの地にあるのは非常に重要だと認知されている」と話した。

LIGOとVirgoとは、KAGRAの感度が一定の水準に到達した時点で共同観測を行うことで2019年に合意していた。20年3月にその水準に達したが、その直前に米欧の2施設は新型コロナウイルス感染拡大の影響で観測を停止し、共同観測は実現しなかった。

KAGRAは心臓部にあたるサファイア製の鏡を支える防振装置を改善するなど、3年にわたって感度を高める調整を続け、共同観測にこぎ着けた。ただ、Virgoは装置に不具合があり、24日には観測を開始しない。KAGRAは4週間の観測後、装置の検証や調整を実施して、さらなる感度向上を目指す。

来年春には3者がそろう観測が実施される見込み。梶田氏は、「運が良ければ、重力波の兆候を発見できるかもしれない」と期待を込めた。

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