トヨタの新型「クラウン・スポーツ」のプロトタイプ(試作車両)に、大谷達也がひと足はやく乗った。驚きの連続だった最新クロスオーバーSUVに迫る!
カッコよさ重視
トヨタの新型クラウン・スポーツは、長らく噂されていたクラウンのSUV版だ。
もっとも、そのスタイリングは先にデビューした「クラウン・クロスオーバー」同様、長い伝統を備えたクラウンという既成概念を打ち破るほどフレッシュかつスタイリッシュ。それどころか、個人的にはクロスオーバーよりもスポーツのほうが、はるかにまとまりのいいデザインであると思うくらいだ。
ボディサイドのキャラクターラインを極力廃し、ボディラインの立体的な抑揚で曲面の美しさを表現するのは、クラウン・クロスオーバーで紹介されたトヨタの新しいデザイン言語であり、さらにいえばヨーロッパのプレミアムブランドやラグジュアリーブランドでもトレンドの手法。
ただし、クロスオーバーはボディ前後端がどちらかといえば水平に近づけられているのでやや間延びした印象を与えるほか、後輪からリヤエンドにかけてのデザイン処理もどこかぽわっとして切れ味が感じ取れない点が、個人的には不満だった。
ところがクラウン・スポーツは、ボディ前後端にはっきりと下降するラインを盛り込むことで凝縮感やメリハリを生み出しているほか、リヤフェンダー付近の張り出し方やCピラーのたたずまいには力強さが感じられて“カッコいい”。
とりわけ、リヤフェンダー、ルーフ、テールゲート、リアバンパーなどの要素が複雑に絡み合うボディ後半部は、自動車デザインのなかでももっとも複雑で難易度が高いと認識しているが、その処理をなんの破綻もなく、無理なくまとめあげている点には感動さえ覚えた。
さらにいえば、分厚く膨らんだリヤフェンダーまわりの造形は、これまでの日本車では見られなかったくらい迫力がある(例外はレクサス「LC」とホンダ「NSX」くらいか?)。
ちなみに、この立体的な形状は、既存のプレスで成型できるものとしては限界に近いという。これは後席の居住スペースを部分的に犠牲にすることで実現したものだが、後述するとおり、リヤシートも決して狭いとは感じなかった。