戦後間もない幼少の頃に見た応神天皇陵古墳(大阪府羽曳野市)の壮大な姿が、忘れられない。同古墳一帯のボランティアガイドを20年以上続ける同市の細見克(かつ)さん(82)。先人の残した歴史遺産を後世に伝えたいとの思いで活動を始めた。そして今、古墳散策を通じて、ひきこもりの大人たちの社会復帰につなげようと模索する。見晴らしのいい古墳に案内することで外の空気に触れ、社会になじむきっかけにと願っている。
歴史の知識より大切なもの
国内2番目の規模を誇る応神天皇陵古墳は、西側に周濠(しゅうごう)の跡が残る。宮内庁の管理地のすぐ外側で、立ち入りも可能。前方部の先端から後円部まで一直線に見渡せ、古墳の大きさが実感できる。
「墳丘の長さは425メートル。これは新幹線17両分。実際に走っているのは16両編成ですが」。新幹線1両の長さは25メートル。細見さんは周濠の跡に立つと、きまってこう説明する。少しでも身近に感じてもらおうと、ひと工夫を凝らす。