23日投開票された衆院山口2、4区の補欠選挙の投票率は、平成8年の小選挙区比例代表並立制導入後ではいずれも過去最低を記録した。2区の投票率は令和3年衆院選よりも9・20ポイント低い42・41%、4区は同13・93ポイント低い34・71%だった。両選挙区とも自民公認の新人が当選したが、低投票率は4区では不利に、2区ではプラスに効いたようだ。
「投票率が過去最低となったのは、安倍晋三元首相不在の選挙だったからだ」
選挙戦から一夜明けた24日、4区で初当選した元下関市議、吉田真次氏の陣営スタッフは低投票率の原因をこう分析した。吉田氏は昨年7月に銃撃で死去した安倍氏の後継候補として立候補した。
吉田氏の得票数は約5万2千票で、安倍氏にとって最後の選挙となった令和3年衆院選の約8万票より約2万8千票少なかった。安倍後援会幹部は「安倍氏の得票の7掛け」の約5万6千票とソロバンをはじいていたが、蓋を開けてみれば約4千票も下回っていた。
投票率、得票数は吉田氏陣営にとって大きな関心事だった。衆院選挙区定数の「10増10減」に伴い、次期衆院選では下関市を含む現4区は新3区に再編され、現3区の林芳正外相の出馬も取り沙汰されているからだ。吉田氏陣営は圧勝して新3区の公認獲得に直結させる戦略を描いていた。
だが、投票率は大きく下がり、得票数も伸びなかった。林氏周辺は「現3区だからか、吉田氏の集会の案内や支援要請はなかった」と話す。これまで安倍氏に投票していた無党派層だけでなく、林氏に近い支援者の動きが鈍かったことなどが原因とみられる。今回の選挙結果は公認決定にも影響を与えそうだ。
一方、2区は岸信夫前防衛相の長男で元衆院議員秘書、信千世氏が約6万1千票を獲得し、野党系無所属元職の平岡秀夫氏との一騎打ちを制した。だが平岡氏との得票差は約5800票差で苦い初戦となった。
地域別の得票数を見ると、信千世氏は下松市や郡部で票を積み上げたが、光市や柳井市では数百票差まで迫られ、大票田の岩国市では約300票差で負けていた。
共同通信の出口調査によると、平岡氏は無党派層の75%を獲得しており、野党系国会議員は「もう少し投票率が伸びていれば(無党派層を取り込んで)逆転もあり得た」とじだんだを踏んだ。信千世氏の勝利は低投票率に救われた側面が強く、選対関係者は「数字を直視したら勝ったとはいえない」と漏らした。(千田恒弥)