春たけなわ。香りがよく、みずみずしい春野菜はサラダにして食べるのが一番、という人も多いのでは? 彩り豊かなサラダは野菜不足の解消にもってこいのメニュー。最近はヘルシーな〝リセット飯〟という感覚で、多忙なビジネスマンの昼食にも取り入れられている。(榊聡美)
主食になる
東京、大阪など都市圏を中心に約20店舗を展開するサラダボウル専門店「WithGreen(ウィズグリーン)」。サラダボウルとは、野菜や肉、穀類などがバランスよく食べられる〝主食になるサラダ〟のことだ。
東京都内のオフィス街にある大手町店(千代田区)では平日、ランチタイムになると行列ができる。スタッフが注文に応じて、大ぶりのボウルに次々と材料を入れてサラダを彩りよく仕上げていく。
月曜日は特に男性の姿が目立つという。広報担当の多田ゆりあさんは、「週末に飲み、食べ過ぎてしまった方が、週初めのランチはヘルシーに、とサラダを選ぶようです。健康診断の前後に利用される男性も多いですね」。
WithGreenの武文智洋代表は元証券マン。米ニューヨークのウォール街で勤務していたときに出合ったサラダボウルに触発され、日本独自のアレンジを加えて7年前に専門店を立ち上げた。
「各店ともリピーターが多く、『しばらく食べないと体が重く感じる』という声も。体の調子を整える〝リセット飯〟として、習慣化されているようです」(多田さん)
食事の最初に
1日に350グラム-。生活習慣病を予防し、健康な生活を維持するための野菜摂取の目標量は広く知られているものの、摂取不足の状態が慢性化している。
一方、新型コロナウイルス禍による健康志向の高まりに伴い、好転の兆しも。キユーピー(東京)が令和3年に行った調査では、「健康のために野菜摂取を意識している」と答えた人が8割近くに上った。
「野菜を使ったメニューの中で最も食べられているのがサラダで、月に20回は食卓に上っている計算です。今年実施した調査では3年前よりサラダを食べるようになった人は3割を超えました」と、同社営業推進部の内山奈美さんは説明する。
こうした意識の高まりに合わせ、同社では野菜やドレッシングの売り場を活用して、食事はサラダから食べようという「サラダファースト」を呼び掛ける。
あと70グラム
野菜に多く含まれる食物繊維は、糖の消化や吸収のスピードを遅らせる働きがある。ご飯やパンなどの炭水化物を食べる前に野菜を取ると、血糖値の急な上昇を抑えることができる。
マブチメディカルクリニック(東京)院長で、内科医の馬渕知子さんは、「よく嚙(か)むと満腹感を得られ、食べ過ぎ防止にもつながります。食事の最初にサラダを食べることは、太りにくい体をつくるうえでも効果的です」と太鼓判を押す。
内山さんいわく、1日の不足分(70グラム程度)は小鉢のサラダ一つでまかなえるという。「まずは、朝昼晩のいずれかに一品足すのが分かりやすく、続けやすいのではないでしょうか」
近ごろはカップ入りサラダの自動販売機まで登場。すぐに食べられるカット野菜の品ぞろえも充実し、いつものサラダをボリュームアップさせることも手軽になった。「あと70グラム」のハードルは、低くなりつつあるようだ。