日本、自国生産拡大が急務 G7農相会合

G7農相会合で発言する野村農相=22日午後、宮崎市
G7農相会合で発言する野村農相=22日午後、宮崎市

主要テーマとなる食料安全保障の課題は、ウクライナ危機後に一気に噴出した。途上国の食料不足が顕在化した上、近年頻発する気象災害が各国農業に与える影響も深刻化。自国を優先するため、主要な食料や肥料など生産資材の輸出規制に乗り出す国が相次いだ。輸入先の多様化だけでは対応が難しくなっており、食料の輸入依存度が高い日本は自国生産の拡大に向け抜本改革が求められる。

世界的な穀倉地帯であるロシアとウクライナの戦争が起きた昨年以降、途上国を中心に食料を十分に購入できない人が増え、飢餓人口が急増。熱波や洪水といった気象災害の多発も加わり、各国の食料囲い込みの動きも加速した。

ウクライナのクブラコフ副首相兼インフラ相は17日、ロシアによる貨物船の検査妨害により、黒海を通じたウクライナ産穀物輸出を実現させているロシアとの合意が「停止」の危機にあると主張。ロシアは合意の期限を5月中旬と主張しており、停止されれば再び世界的な供給不足に陥ることが懸念される。

特に食料自給率(令和3年度、カロリーベース)が38%とG7内で突出して低い日本にとって深刻な問題となる。歴史的な円安で輸入価格が上昇していることも追い打ちとなって、食品価格のさらなる上昇にもつながりかねない。

今回のG7農相会合では食料自給率の低い日本や途上国の観点も踏まえ、農業の「生産性向上」と「持続可能性の確保」を両立する方向性をG7で共有するよう調整が進む。

化学肥料や農薬を使わない有機栽培などを取り入れた持続可能な農業は、肥料も大半を輸入に頼る日本には受け入れやすい。環境負荷の少ない農法のため、欧米各国も導入推進には前向きだ。

ただ、「肥料や農薬を減らせば収穫量の減少につながる恐れもある。生産性向上に逆行する面も持つ」(農林水産省幹部)。このため、野心的な高い目標を設定して主導権を握りたい欧州と、急速に持続可能な農業へシフトすることによる生産量の減少を懸念する米国では温度差もある。導入推進を巡って欧米の主張が交錯しているところもあり、妥結点を探る議長国の日本は難しいかじ取りを担う。(西村利也)

G7農相会合が開幕 食料安保で協力強化

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