チャットGPT活用、前のめりの日本、欧米では規制論広がる

チャットGPTのロゴ(ロイター=共同)
チャットGPTのロゴ(ロイター=共同)

自然な会話形式で質問に回答できる対話型人工知能(AI)「チャットGPT」を巡り、日本政府と各国政府の姿勢の違いが鮮明になっている。西村康稔経済産業相は国会答弁作成に利用する可能性に言及したが、欧米では情報漏洩(ろうえい)や個人情報の無断収集への懸念から規制論が拡大。イタリアなど利用を一時禁止する国が出ている。

「ぜひこれは活用を考えていきたい」

西村氏は11日の閣議後記者会見で、チャットGPTを国会答弁の作成の際に活用することで、官僚の業務負担の軽減につなげる考えを表明。チャットGPTが最新のデータを学習することや情報漏洩への懸念を解消した場合という条件もつけたが、「国会答弁への活用」発言はネット上などで多くの批判を招いた。

元官僚で大正大学地域構想研究所教授の小峰隆夫氏は「国会答弁で活用するとなると内容を精査しないといけないので、業務負担はあまり省けないだろう」と指摘。「国会答弁をチャットGPTに丸投げするなら、議員もチャットGPTに回答を聞けばいいだけではないか」と突き放す。

西村氏以外にも閣僚らの前向き姿勢は目立つ。河野太郎デジタル相は各省庁からチャットGPTを含むAIの活用案を募集する方針を表明。農林水産省は同省が提供している電子サービスのマニュアル改定作業などに活用する予定だ。

日本国内の積極活用の動きに対し、欧米では規制強化の議論が広がる。

イタリアの情報保護当局は3月末、チャットGPTの情報収集方法について「十分な説明がない」などとした上で利用の一時禁止を発表。欧州連合(EU)加盟国の情報保護当局で構成する欧州データ保護会議もチャットGPTの情報収集などの課題を探り、対応を協議する専門部会の設置を発表した。

チャットGPTを開発したオープンAIが本社を置く米国も規制の方針を示し始めている。バイデン政権は11日にAIの規制方針を検討するため、一般に意見を求める手続きを始めた。信頼性のあるAIサービスの確保に向けて、AIの評価方法や認証制度などについて意見を公募する。

チャットGPTはオンライン上の大量の情報を読み込んだ上で、質問に対する回答を作成する。しかし、著作物を無断で読み込むため欧米では批判されているほか、誤った内容を自然に回答したり、入力情報が外部に流出したりする欠点もある。悪意ある国や組織が偽情報の拡散に利用したり、なりすましなどのサイバー犯罪に悪用したりするなどの懸念も強い。

一方で、その使い勝手の良さから月間利用者は昨年11月の提供開始から2カ月で1億人超に急拡大している。しかし、日本ではAIの学習目的であれば著作物を読みこませることに許可が不要なため著作権侵害に当たらないなど、利用の制限は困難との声も上がる。

日本政府は月末に開催される先進7カ国(G7)デジタル・技術相会合でチャットGPTなどAIについて議論するが、活用と規制の両立を目指す方針を示すことができるか手腕が試される。(大坪玲央)

チャットGPTとは、米国新興企業のオープンAIが昨年11月に提供を始めた、人工知能(AI)を活用して対話形式で質問に回答するサービス。メールアドレスなどを登録すれば誰でも利用できる。インターネット上の膨大なデータを学習し、これまでのAI対話サービスにない使い勝手の良さから急速に利用が広がっている。一方、個人情報などの流出や、使う人の思考力低下を懸念する声もある。

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