ChatGPTの可能性と脅威、ビル・ゲイツ氏も持論展開 AI議論で注意すべき3点とは

OpenAIが開発したChatGPTが話題を集めている(画像:OpenAI公式Webサイトより)
OpenAIが開発したChatGPTが話題を集めている(画像:OpenAI公式Webサイトより)

昨年11月の公開から注目されてきた「ChatGPT」だが、3月14日には最新バージョンとなる次世代の大規模言語モデル「GPT-4」が公開され、その進化レベルが話題になっている。

ところが人々の熱狂に反し、ChatGPTを制限しようとする動きも出ている。NHKは3月31日に「イタリアの当局は、アメリカのベンチャー企業が開発した対話式AI、ChatGPTについて、膨大な個人データの収集などが個人情報の保護に関する法律に違反している疑いがあるとして一時的に使用を禁止すると発表しました」(NHKニュース、2023年4月1日)と報じている。

さらに現在、アイルランドもGPT-4の禁止を検討しているという。また米国内でも非営利団体Future of Life Institute(フューチャー・オブ・ライフ・インスティチュート)がGPT-4の利用を差し止めるよう要請したことも報じられている。同団体が3月29日に発表した書簡には有名人を含む9000人以上が署名している(4月5日時点)。

フューチャー・オブ・ライフ・インスティチュートはChatGPTの利用を差し止める書簡を発表した(画像:Future of Life Institute「Pause Giant AI Experiments」)
フューチャー・オブ・ライフ・インスティチュートはChatGPTの利用を差し止める書簡を発表した(画像:Future of Life Institute「Pause Giant AI Experiments」)

確かにChatGPTを脅威と感じるのも分かる。例えば先日、筆者がとある企業の幹部と話をしていた際に「AIの進化が人間の知能を超える『シンギュラリティ』を考えると、ChatGPTは不安視する存在かもしれない」という話になった。確かにAIが勝手に動き始めたら怖い。

さらにその逆も考えられる。ChatGPTのAIを運営会社のOpenAIが独自でコントロールしているとの指摘などが一例として挙げられる。OpenAIが意図的に回答をコントロールできるため、ユーザーは知らず知らずのうちにChatGPT(つまりOpenAI)に情報操作されてしまう危険性があるのだ。

ChatGPTの運営元であるOpenAI(画像:OpenAI公式Twitterより)
ChatGPTの運営元であるOpenAI(画像:OpenAI公式Twitterより)

しかもChatGPTはオープンソース化されていないために、どのようなアルゴリズムで情報を「表示」しているのかも明らかになっていない。鳴り物入りで登場したAIは、そんな議論も生んでいるのである。

ChatGPTはAIについてさまざまな懸念をあらためて浮き彫りにしているが、将来的にAIが私たちの働き方を変えることは間違いないといえる。

ビル・ゲイツ氏の持論――ChatGPTの可能性と脅威

そんなAIの未来について、マイクロソフト社の創業者であるビル・ゲイツ氏は3月31日、7ページからなる「AIの時代が始まった(原題:The Age of AI has begun)」というタイトルのブログを発表した。

そこでは「AIが私たちの生活を豊かにする」という、ゲイツ氏の描く未来について説明されている。コンピューターの歴史を変えた人物がどうAIを見ているのかは興味深い。その内容を紹介したい。

ビル・ゲイツ氏のブログ「AIの時代が始まった」(画像:GatesNotes「The Age of AI has begun」より)
ビル・ゲイツ氏のブログ「AIの時代が始まった」(画像:GatesNotes「The Age of AI has begun」より)

まず、ゲイツ氏の言う「AIの未来」とはそんな先の話ではない。5~10年でAIがさまざまなことを大きく変えうると予測している。

「AIの進化は、マイクロプロセッサーやパーソナルコンピューター、インターネット、携帯電話の誕生と同じくらい根本的なものだ。AIは仕事や学習、旅行、健康管理、コミュニケーションの在り方を変える。産業界全体がこの技術を中心に方向転換することになるだろう。ビジネスは、企業がいかにうまくAIを活用するかにかかっている」と、ビジネスにおいてAIが多くの仕事を奪っていくよりも、仕事の在り方をポジティブに変えていく可能性が高いという考えを示している。

ゲイツ氏は「AIに取って代わられる仕事」についても持論を展開する。「例を挙げると、営業(デジタルまたは電話)やサービス、文書の処理(支払い管理や経理、保険金請求など)は意思決定が求められるが、継続して学ぶ能力は必要ない。企業にはこれらの作業を習得させるための訓練プログラムがあるが、ほとんどの場合、成功事例と失敗事例を基に社員を教育している。近い将来、こうした事例データをAIに学習させることで、人間がより効率的に仕事できるようなるだろう」

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