衆院和歌山1区補欠選挙応援で、和歌山市の雑賀崎漁港を訪れた岸田文雄首相の近くに爆発物のようなものが投げ込まれた事件で、現場で爆発した物体は形状などから、手製された「パイプ爆弾」の可能性が浮上している。「素材は容易に入手でき自作も難しくない」と専門家。悪用を防ぐには限界があると指摘する。
銃器評論家の津田哲也氏によると、一般的なパイプ爆弾は、パイプの中に火薬と起爆装置などを詰め込んで密閉。着火とともに内部の圧力が高まり、破裂する仕組みという。
和歌山市の現場での映像を確認した津田氏は、爆発物を覆う金属のようなものが、シルバー色系統だった点に着目。仮に材質が鉄だった場合、破裂の衝撃で多数の負傷者が出てもおかしくないとし、「薄いアルミニウムなどが使われたのではないか」とみている。
パイプ爆弾は1960年代後半から70年代にかけて激化した学生運動や過激派の活動に使用された経緯もあり、特殊な専門的知識がなくても、製作することはできるという。
パイプ爆弾の素材は火薬も含め、一般に広く流通しており、入手はたやすい。自作するための情報もネット上にあふれている。
今回の事件では、投げつけから爆発までに時間差があった。「無線により手元のスイッチなどで発火させたのでは」(津田氏)。おもちゃのラジコンカーなどに使われるリモコンの仕組みを流用すれば、遠隔操作もさほど難しくないとするが、ライターなどで着火した可能性も捨てきれない。
より大きな被害をもたらす意図があれば、火薬量を増やし、パイプ内にくぎや鋲(びょう)を入れることも考えられる。津田氏は「幸いにも今回のケースで負傷者はいなかった。明確な危害意思があったのかは(現時点で)判然としない」と語った。(矢田幸己)