カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の第1号として、政府が大阪府市の整備計画を認定した。「観光立国」の起爆剤となることが期待されている。

一方、ギャンブル依存症や治安悪化につながるのではないかとの懸念は根強い。政府と府市は十分な対策を講じ、地域に経済的な貢献ができる施設となるよう取り組まねばならない。

府市は米大手MGMリゾーツ・インターナショナル日本法人とオリックスを中核株主とする「大阪IR株式会社」を事業者とし、大阪市の人工島・夢洲(ゆめしま)に整備する。延べ床面積77万平方メートルのうち、カジノ施設は6・5万平方メートルで、6千人超を収容できる国際会議場や富裕層向けの高級ホテル、展示施設などを併設し、令和11年秋から冬に開業予定だ。

府市は年間来場者数を約2千万人と見込み、年間売り上げは約5200億円と想定、その8割はカジノが占める見通しだ。経済波及効果は近畿圏で年間約1兆1400億円と試算する。

懸念されるギャンブル依存症対策として、政府は関連法で日本人客の入場回数は週3回、28日間で10回までに制限する。外国人は入場無料だが、日本人からは1回6千円の入場料を徴収し、マイナンバーカードによる本人確認も必要だ。マネーロンダリング(資金洗浄)防止策として、100万円を超える現金とチップを交換した客の情報は事業者が国に報告することを義務付けている。

政府は「世界最高水準の規制」をするとうたうが、負の側面も持つIRへの対応策に手抜かりがあってはならない。海外カジノの事例を徹底的に検証し、反社会的勢力が介入する隙を生まないよう万全の対策を進めるべきだ。

カジノ誘致は平成21年、府知事だった橋下徹氏が構想を表明し、地域政党「大阪維新の会」が旗を振ってきた。9日投開票の大阪ダブル選は、維新がIR反対派を寄せ付けずに完勝したが、得票のすべてがIR賛成というわけではないだろう。府市は住民の理解を得られるよう、丁寧な説明を尽くさなければならない。

一方、IR整備法が「最大3カ所」整備可能とした枠は埋まっておらず、長崎県の計画は審査継続となった。

先行事例となる大阪IRは、試金石となる。

会員限定記事会員サービス詳細