ITスタートアップ(新興企業)のエボラニ(横浜市)は12日、対話形式で自然な回答をする人工知能(AI)のサービス「チャットGPT」と無料メッセージアプリのLINE(ライン)を連携させて、顧客の質問に自動で正確な内容を回答するサービスの提供を始めた。顧客がLINE上で「サービス概要は」などと尋ねるとチャットGPTに直接、質問するよりも正確な回答をLINE上で自動で受け取ることができるという。
エボラニの新サービスは、LINE上で顧客の質問に自動で回答する従来の同社のサービスに、チャットGPTを組み込んだことでより自然な回答が可能になった。
一方でチャットGPTには自然な文章だが誤った内容を回答するという欠点があるため、新サービスには、導入企業が組み込んだチャットGPTにサービスや商品内容のデータを学習させて、正確に回答させる機能も組み込んだ。
同社のソウ・ユ代表取締役は「初期費用は2カ月無料にしており、導入先の企業とともに機能を改善させたい」と話した。今後はLINE以外のメッセージアプリへの対応なども検討する方針だ。
チャットGPTの仕組みを活用した新サービスの展開が加速している。3月にチャットGPTを運営する米オープンAIが他社のソフトウエアと連携できる仕組みを開放したためで、LINEなどメッセージアプリ上で自然な文章で質問に自動回答するサービスが拡大しそうだ。一方でチャットGPTには情報の外部漏洩などの懸念や誤回答などの欠点もあるため、連携サービスの提供企業にはこうした欠点への対応も求められる。
オープンAIは3月にチャットGPTの中核といえるAI「GPT」を有料で各企業に開放した。これにより、自動で質問に答えるチャットボット(自動会話プログラム)のサービスを提供していた企業が次々にGPTの導入を進めており、12日に新サービスを始めたエボラニもその一つだ。
エボラニ以外でも、顧客対応の自動化サービスを提供していた企業の導入が目立っている。主に法人向けのメッセージアプリ「Slack(スラック)」で利用するチャットボットを提供している企業や、チャットGPTの欠点である回答の誤りを補完する機能を追加した企業もある。
一方、三井住友銀行は4月から情報漏洩の懸念に注意しながらGPTを組み込んだ対話型AIツール「SMBC-GPT」の活用実験を開始した。多数の銀行規定の検索や資料作成などで活用することを想定しているが、顧客情報を入力してもグループ会社などが把握できない仕組みにすることで、全従業員への導入に問題がないかを調べているという。(大坪玲央)