「戦場で決着」変わらず 露・ウクライナ、和平や停戦の兆しなく

ロシアによる侵略が続くウクライナ情勢で、ブラジルなど第三国から和平協議や停戦を求める声が強まってきた。戦争の長期化に伴う食料価格高騰などの悪影響が響いているためだが、ロシアは東部ドネツク・ルガンスク両州の全域制圧などを目指し、和平協議に応じる意向をみせていない。ウクライナが近く本格的な反攻に出る構えで、双方が「戦場で決着をつける」との姿勢を貫いている。

米シンクタンクの戦争研究所は最近のリポートで、全ての前線で露軍が攻撃を仕掛ける頻度が低下しているとの分析を示した。露軍が砲弾を節約しているとの情報もあるという。今後見込まれるウクライナ軍の反攻に備えたものである可能性があるとした。

戦況が全体的に停滞する中、中国の習近平国家主席や、露同盟国ベラルーシのルカシェンコ大統領らが最近、ロシアとウクライナ双方に停戦を呼び掛けた。ブラジルのルラ大統領も和平を促す立場だが、ロシアはウクライナ側に責任を押しつける発言を続けている。

プーチン露大統領は3月21日、首都モスクワでの習氏との会談後の共同記者発表で、米欧諸国によるウクライナ支援や、対露交渉を否定するウクライナのゼレンスキー政権が「平和的解決」を妨げているとの持説を展開。「米欧はウクライナ人が最後の一人になるまで戦うと本当に決めたようだ」とし、軍事作戦を続ける意思を改めて示した。

ルカシェンコ氏が3月31日に即時停戦と和平交渉の開始を求めたことに関しても、ペスコフ露大統領報道官は「軍事作戦は現在、ロシアが目標を達成するための唯一の方法であるため、継続される」と主張。現時点での停戦を否定した。

ロシアは東部ドネツク・ルガンスク両州の制圧に加え、南部ヘルソン・ザポロジエ両州の支配地域を維持する目標を変えていない。

一方のウクライナは、現時点で停戦すればロシアによる占領地支配の既成事実化につながる上、将来的な再侵攻に向けた準備期間をロシアに与えるだけだとして、露軍が撤退しない限り交渉には応じないとの立場を堅持している。

双方が一歩も引かない中で、「戦場で勝敗の大勢が決しない限り、停戦や和平に向けた動きは本格化しない」(軍事専門家)との見方が根強い。当面は「数週間内」に本格化すると見込まれる戦闘の行方が、停戦や和平に向けた条件を左右する展開となりそうだ。

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