【台北=矢板明夫】台湾の馬英九前総統は7日、12日間の中国訪問を終えて台湾に戻った。台北近郊の桃園国際空港で「(中国と)迅速に対話と交流を回復させることは、台湾民衆の利益に合う」との声明を発表した。馬氏は「歓迎を受け、現地の若者らと踏み込んだ交流ができた」などと自賛し、訪中の成果をアピールした。
中国国民党の馬氏は、5日に米国でマッカーシー下院議長と会談した民主進歩党の蔡英文総統について「台湾を危険な状態に導く」と批判した。
馬氏は3月27日から上海、南京、武漢、重慶などを回り、各地の指導者と会談したほか、「南京大虐殺記念館」など5カ所の抗日施設を見学した。そのたびに「中華民族は結束すべきだ」などと強調し、自らが中国人であることをアピールした。
馬氏の一部旅程には中国で台湾政策の実務トップを務める宋濤(そう・とう)国務院(政府)台湾事務弁公室主任が同行し、会談を重ねた。しかし、香港メディアなどが事前に伝えた中国共産党序列4位の王滬寧(おう・こねい)人民政治協商会議主席との面会は実現しなかった。
中国は台湾を国として認めていないため、馬氏は中国で「前総統」と呼称されず、「馬さん」と呼ばれた。しかし、馬氏が南京で「(中国が存在を認めていない)中華民国の前総統」と自称したため、中国側の逆鱗に触れた可能性があると台湾のメディア関係者は指摘した。