【北京=広池慶一、三塚聖平】林芳正外相は2日、中国・北京で秦剛(しん・ごう)国務委員兼外相と会談した。林氏は中国当局による日本の製薬大手アステラス製薬の現地法人幹部の日本人男性の拘束事件について抗議したうえで早期解放を要求した。これに対し、秦氏は「法に照らして処理する」と強調し主張は平行線をたどった。一方、両外相は首脳を含め緊密に意思疎通する方針で一致。日中韓3カ国の対話再開も申し合わせた。
両外相による対面会談は初めてで、昼食会を含めて約4時間に及んだ。日本の外相による中国訪問は2019年12月以来、約3年3カ月ぶり。
林氏は会談で、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の東シナ海情勢や、ロシアとの連携を含む中国の日本周辺での軍事活動の活発化に関し深刻な懸念を改めて表明。台湾海峡の平和と安定の重要性も強調した。
これに対し秦氏は、台湾問題は「中国の核心的利益の核心だ」と主張。台湾との連携を進める日本に対し「台湾問題への介入は許されず、どのような形であれ中国の主権を損なってはならない」と警告した。
林氏は、日本政府が今春以降の開始を見込む東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出計画を巡り、中国側の科学的根拠に基づかない対外発信に抗議した。3月31日に日本政府が発表した半導体製造装置の輸出管理厳格化に関しては「特定の国を対象としたものではない」と説明した。
日中外相会談後、林氏は習近平国家主席に次ぐナンバー2で、3月に就任した李強首相と面会。昨年11月、岸田文雄首相と習氏との会談で「建設的かつ安定的な日中関係」構築の目指すことで一致したことを踏まえ、「両首脳間の合意を着実に実施するために日中双方で努力していきたい」と述べた。
林氏は中国外交担当トップの王毅(おう・き)共産党政治局員とも会談。夕食をともにした後、2日夜に日本に帰国する。