【ソウル=桜井紀雄】日中外相が2日の会談で、日中韓3カ国の対話再開を申し合わせたことを最も歓迎する立場にあるのが韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)政権だ。ホスト国ながら3年連続見送られてきた3カ国首脳による日中韓サミットを早期再開させることで、ギクシャクした中国との関係改善も目指す。
尹大統領は3月16日の日韓首脳会談で3カ国対話の早期再開の重要性を確認。在外公館長を集めた27日の会合でも、日中韓サミットを再開させ、「域内の平和と発展のためにともに努力する」方針を強調した。
2016年の米軍の迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の韓国配備決定に中国が反発して冷え込んだ中韓関係は、韓国芸能人の中国での活動が制限されるなど、完全な修復には至っていない。
加えて、北朝鮮の核・ミサイルの脅威に対抗して日米韓の安全保障協力強化を最優先させる尹政権に対し、中国は、米国主導の対中包囲網に傾倒する動きとみて警戒を強めている。
尹政権は昨年、日米と足並みをそろえ、外交・安保の包括的指針である韓国版インド太平洋戦略を公表した際も、中国との「成熟した関係の実現」を明記するなど、中国排除と受け取られないよう腐心してきた。最大の貿易相手国である中国との関係が一層冷え込めば、経済への打撃が避けられないからだ。
韓国を自国側に取り込みたい中国もサミット再開を支持する立場だ。今回の日中外相会談を受け、サミット再開に向けた3カ国の探り合いが本格化しそうだ。