環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に参加する11カ国が英国の新規加盟に合意した。7月の閣僚会合で承認する見通しだ。発足メンバー以外では初の加盟となる。
欧州の先進経済国である英国の加盟を歓迎したい。太平洋周辺諸国の自由貿易圏だったTPPが欧州へと地域的な広がりをみせる意義は大きい。
日英間には2021年1月に発効した2国間の経済連携協定(EPA)もあるが、英国のTPP加盟で域内の自由貿易が活性化すれば、日本を含む加盟各国の成長基盤はさらに強まろう。
TPPは、高水準の関税撤廃と投資などの共通ルールを併せ持つ先進的なメガ協定である。
スナク英首相は「欧州連合(EU)離脱によって得られた自由がもたらした真の経済的利益を示すものだ」とする声明を出した。
英国はEU離脱後、欧州の枠にとらわれず日本や世界とのつながりを深めてきた。その大きな成果がTPPへの加盟である。
とりわけ中国が覇権主義的に振る舞うこの地域で、自由貿易や市場経済などの価値観を日本と共有する英国が存在感を高めることは有益だ。日英は結束して域内経済を牽引(けんいん)したい。
英国が決着したことで、今後は中国や台湾、エクアドル、コスタリカなどの加盟申請を議論することになる。焦点は中国と台湾の扱いだが、承認の是非を判断する際には、TPP加盟国に求められる自由化水準を満たしているかどうかを厳しく問う必要がある。
特に中国は、国有企業への優遇措置などを抜本的に改めないかぎり、TPP水準に適合しないのではないか。TPPは元来、公正さや透明性に欠ける中国型経済とは明確に異なる自由貿易モデルを構築することに意義があった。中国の加盟を認めて、この点が曖昧になるようでは元も子もない。
TPP加盟国の中には、中国の経済力から得られる恩恵に期待する声もあろうが、例外を認めるわけにはいかない。英国並みの自由化を求めるよう徹底すべきだ。
英国の加盟を機に、TPPを離脱した米国には改めて復帰を促したい。バイデン米政権においてもTPPなどの貿易協定に否定的な状況には変わりがないが、自由な経済秩序を守る上で米国の存在はやはり大きい。日英が連携して働きかけを強めるよう求めたい。