心理学の世界で、有名な警句がある。「ハンマーを持てば、すべてがクギに見える」。目の前で問題が起きたとき、人は自分の得意なやり方で解決しようとして、しくじる。「マズローのハンマーの法則」という
▼身に覚えが、ある。ひとこと相手に謝れば済むものを、さかしらに理屈をこね回し問題をこじらせてしまう。遠い昔どころかつい先日も―と、これはわが赤恥の記憶である。腕力や財力に訴える人、知識にものをいわせる人、それぞれがにがい記憶をお持ちだろう
▼「有事」にたとえられる少子化の時代に、一人でも多くの子供を産み育ててもらうための方策を、まず考えるのは理解できる。「児童手当をいまよりも手厚くする」「出産費用の保険適用についても検討に乗り出す」という政府の試案に、異論をはさむ余地はない