元従業員が語る、大手テック企業の「冷ややか」な解雇通知の方法

「確かにあきてれはいますが、驚きはありません」と、シャーマンは言う。「わたしはいわゆる20世紀型組織のなかで育った世代です。そうした組織は、従業員を消耗品のように扱っているとも言えるでしょう」

従業員に対する企業の態度もパンデミックの間に悪化したと、マンチェスター大学ビジネススクールの教授で組織心理学を専門とするケアリー・クーパーは言う。在宅勤務のせいで上司と部下の関係はかなり疎遠になった。「実際に会う機会が減り、バーチャルなやり取りが格段に増えました」と彼は言う。「そのことが、部門管理者が部下と深いつながりを築けない状況を生んだのです」

人間として扱ってくれない

テック企業が自分たちの忠誠心に報いてくれるとは限らないことに、もう気づいてしまったと語る労働者もいる。

「正直なところ、2年ほど前から勤務先の会社に対する考え方が変わり始めました」と、人事採用プログラム担当マネジャーとして1年間メタに勤務したあと、22年11月に解雇されたアレハンドラ・ヘルナンデスは語る。「いまは、『これはあくまでビジネスで、自分は一定の仕事をするために雇われているだけなんだ』と考えています」

カリフォルニアで働くということは、互いの自由意思によって雇用されることを意味し、その関係はいつ打ち切られてもおかしくないのだとヘルナンデスは指摘する。そのことに気づいて、考えを改めることができたと彼女は言う。

ヘルナンデスは、自分や同僚たちがメールで解雇を告げられたことにさほど怒りを感じなかったという。「Zoomでご機嫌取りをされながら解雇を言い渡されるより、メールで知らせてもらったほうがずっといいですから」と、彼女は語る。

労働者のウェルビーイングが、経営陣に対する株主や投資家の信任よりも優先されることは決してなく、時勢が厳しくなれば自分たちの立場も危うくなる。このことを、解雇の波を乗り切った人たちも、ここ数カ月間で痛烈に思い知らされてしまった。

「大手のテック企業は、社員を人間として扱ってくれていると誰もが信じ込んでいました」と、ラトガーズ大学のシャーマンは語る。「けれども、それは過去のある時点においてだけで通用した話でした。厳しい時代になった途端、打撃をくらう可能性のあることに、わたしたちは気づいてしまったのです」

(WIRED US/Translation by Mitsuko Saeki/Edit by Naoya Raita)

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