元従業員が語る、大手テック企業の「冷ややか」な解雇通知の方法

新しい名刺の束を22年12月に受け取ったばかりのボウリングにとって、それは完全に予想外の出来事だった。人事考課で高評価が見込まれていたり、すでに好意的な評価を受けたりしていながら、解雇通知を受けとった社員たちもいたようだ。

「誰にとっても寝耳に水でした」と、ボウリングは語る。「業績の悪い社員や特定のプロジェクト関係者が狙われたようには見えませんでした。誰彼かまわず銃で撃ちまくっているようだと言う者もいましたよ」

会社に残っている人々も、次は自分かもしれないと疑心暗鬼になっている。会社のシステムにまだアクセスできている社員からボウリングが聞いた話によると、すでに8,000人の氏名が従業員名簿から消えたという。それなのにグーグルの親会社であるアルファベットは、全世界でさらに12,000人を解雇する予定だと発表した。「誰もがもしもの場合に備えて別れの言葉を交わし合っています。この先、いつ首を切られるかわからないからです」と、ボウリングは言う。「やる気をそぐだけの、実にひどいやり方ですよ」

一部の大手テック企業には、突然の解雇を告げられて驚いた社員もいたようだ。企業側の伝達の不手際のせいで、いまも大きな苦痛を抱えたまま失業生活を送っている人々がいる。

セールスフォースは1月に従業員8,000人を解雇した。しかし、共同最高経営責任者のマーク・ベニオフは、この人員削減について説明するために全社規模の会議を開いたにもかかわらず、あらゆる質問をかわし続けたと報じられている。

ボウリングによると、グーグルで一緒だったかつての同僚たちも、自分たちを解雇した経営陣にひとつも質問できずにいることに憤慨しているという。一部の企業では、もはや手当たり次第に従業員が解雇されているようにみえる。50%の人員削減案の一環としてイーロン・マスクが複数のチームを丸ごと切り捨てたツイッターは、その顕著な例だ。

ぬくもりのない解雇通知

「解雇された理由を友人や家族に説明することは、かなり恥ずかしいですね」と語るのは、22年末の大規模解雇の対象となった元メタ・プラットフォームズ従業員の女性だ。彼女は今後の求職活動への影響を避けるため、匿名での取材を希望した。

しかし、問題はその唐突さだけではない。解雇された従業員は、告知の方法が機械的であったことにも傷ついている。グーグルからボウリングにようやく届いた解雇通知メールの文面は「法律用語だらけ」で、文末に同社のバイスプレジデントの署名があるほかは、ひとつのあいさつもなかったという。

「結びの言葉もなければ、『申し訳ない』のひと言もありませんでした」と、ボウリング語る。「弁護士が書いた文章ですから、行間には後ろめたさも何も感じられません。非常に冷たい文面でした。何もかもがとても冷ややかだったのです」

これまでのグーグルは、退職する社員さえ大切に扱う会社であったとボウリングは言う。「今回の解雇は、去っていく人々を見送るかつての社風とは似ても似つかぬものでした」

グーグルにコメントを求めたが、回答はなかった。

しかし、ラトガーズ大学の教授で労働と雇用関係を研究するスーザン・シャーマンに言わせれば、テクノロジー各社の描く自らの姿と実際の行動の間にある隔たりは、ずっと前から存在していたようだ。

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