自民党の安倍晋三元首相は凶弾に倒れてもなお、左派系の人たちの批判の的となり続け、時に憎悪にも似た心ない言葉を投げつけられている。「政治家は歴史の法廷の被告席に座る」と語ったのは中曽根康弘元首相だ。時の権力者を検証する作業は極めて重要である。だが、安倍氏の場合、亡くなってから1年もたっておらず、歴史の法廷に立つのはまだ早かろう。安倍氏に執着する人たちの心の底には、一体何があるのか。
上映が終わると観客から、エンドロールの前と後の2回、拍手が起きた。映画のタイトルは、安倍氏を題材にした「妖怪の孫」。「妖怪」が「昭和の妖怪」といわれた祖父の岸信介元首相を指しているのは想像に難くない。
筆者はある夜、この作品を見るために映画館に足を運んだ。作品のホームページには「戦争ができる国になろうとしているニッポンの本当の姿、その根本にあるものをひもといていく」とある。ひもといた先にある諸悪の根源は安倍氏にあり、といわんばかりの内容だった。