持続可能な社会の実現に向けて、待ったなしの再生可能エネルギーの拡大。2014年から環境にやさしい再生可能エネルギー事業に取り組む東急不動産は、総合デベロッパーとしての知見を生かし、地域との共生のもと事業を展開している。今回は埼玉県東松山市でスタートしたソーラーシェアリングの取り組みについて、同社インフラ・インダストリー事業本部の熊澤 圭悟氏に聞いた。
国内80カ所以上で再エネ発電を行う東急不動産
温室効果ガスの削減やエネルギー自給率向上の観点から、今注目を集める再生可能エネルギー。そんななか、不動産の枠を超えた再生可能エネルギー事業を進めるのが東急不動産だ。
「国内の保有施設(※)の使用電力を100%再生可能エネルギー化しているほか、全国80カ所以上で発電を行うなど、脱炭素に向けた取り組みを加速させています」
なかでも力を入れている事業の一つがソーラーシェア事業だ。
「農地に太陽光発電施設を設置し、農業と発電を両立させる取り組みです。近年、高齢化や労働力不足などから耕作放棄地の増加が問題視されています。そういった農地を有効活用することで、地域支援にもつながることを目指しています」
※一部施設を除く
東松山市でソーラーシェアリングの実証実験をスタート
2022年12月からは、埼玉県東松山市で新たな取り組みがスタート。約5220平方メートルの敷地を使ったソーラーシェアリングの実証実験プラットフォーム「リエネソーラーファーム東松山」の開設だ。
「現在水稲のほか、人参、枝豆、ブルーベリーの3種類の作物を栽培しています。発電施設を設置することで収量は下がりますが、地域の平均単収の8割を確保できるよう農業面での工夫を凝らしています」
発電した電力は、同社が保有するビル8物件に供給する。
「また地域の方向けにも電力を一部確保しており、災害時の非常用電源としてご活用いただけるほか、将来的にはEV自動車の充電スポットとしても電力を使用することを視野にいれています」
実証実験としては、太陽光発電施設の導入拡大に向けた設計や最適な農作物を検討している。
「農地所有者の方とともにトラクタなどの農業機械が入りやすい設計を吟味しました。また水稲栽培は全国でも事例が少ない作物の一つで、両面の太陽光パネルで水の反射を生かして効率的な発電方法を模索しています」
サステナブルに貢献できる地域住民の憩いの場も
プラットフォームを構成するのは、発電施設だけではない。
「近隣には、ソーラーシェアリングの地域共生を目的とした施設『TENOHA東松山』を開設しました。実証実験の説明や展示の場としてはもちろん、コワーキングスペースやワークショップの場として、広く活用していただくことができます」
さらに施設内にあるカフェでは、ソーラーシェアリングや近隣の農地で栽培された野菜を積極的に採用したメニューも。
「目指しているのは、訪れるお客様が知らず知らずのうちに、地産地消やサステナブルに貢献できる空間です。地域住民の方は、自宅で育てた野菜をお持ちいただくと、コーヒーが一杯無料になるというサービスも行っているので、ぜひ多くの方に足を運んでいただきたいですね」
地域に根差した再エネ事業拡大に向けて
「『TENOHA東松山』では、施設の運営のほかにも、田植えや稲刈り、収穫体験などを実施しています。実はこの施設は既存の建物をリノベーションしたもので、改修時には地域の子どもたちにも手伝っていただきました。今後ますます幅広いイベントを開催していきたいですね」
再生可能エネルギーの導入実現のためには、地域住民の理解の獲得が必要不可欠だ。
「今回のプラットフォーム導入にあたり、該当地区の方だけでなく近隣地区の方にもお声がけし、事業説明などを行いました。皆さんに賛同いただけたことで、力を入れて事業を拡大しなければという思いがより高まりました」
今後も実証実験を続けながら、地域に根差した再生可能エネルギーの構築に向けて、取り組みを加速させていく。
提供:東急不動産