日本ゆかりのダンサー2人、名門オペラ座で大活躍 初の最高位、期待の新星も

パリ・オペラ座バレエ団の公演を終えた舞台上で、最高位のエトワールの任命を受けたオニール八菜さん(手前)=3月2日、パリ(オペラ座提供ⓒAGATHE・POUPENEY・共同)
パリ・オペラ座バレエ団の公演を終えた舞台上で、最高位のエトワールの任命を受けたオニール八菜さん(手前)=3月2日、パリ(オペラ座提供ⓒAGATHE・POUPENEY・共同)

350年の伝統を誇るパリ・オペラ座バレエ団で、日本にゆかりあるダンサーが相次いで高い評価を受けている。オニール八菜(はな)さん(30)が今月2日、日本出身者として初めてエトワール(最高位ダンサー)に昇格。1月には日仏ハーフの新星、ムーセーニュ・クララさん(18)が、優れた若手ダンサーに贈られる「カルポー賞」を受賞した。背景には昨年、多様性に理解のある新芸術監督が就任した影響もありそうだ。

オニール八菜さん

「あまりにも突然で、まったく想像していなかったので、アレキサンダー・ネーフ(同団総裁)が私の名前を呼んだ瞬間、とってもびっくりしてしまいました。まだエトワール(仏語で星の意味)になった実感がありません。でもこれからは、もっともっと舞台で、自由にいろいろな役を表現するのが楽しみです」

オニールさんは2日のパリ公演後、舞台上で昇格を告げられた。ニュージーランド人の父と、日本人の母との間に生まれ、8歳まで東京育ち。オペラ座は世界最高峰のバレエ団の一つで、現在約150人のダンサーが所属するが、外国人は少数派だ。

ダンサーには5段階の厳格な階級制度があり、頂点のエトワールはオニールさん含め現在、18人。オニールさんは2009年、ローザンヌ国際バレエコンクールで1位。13年に同団正団員になり、16年に権威あるブノワ賞を受賞するなど、華と実力を兼ね備えた踊りは、すでに高く評価されている。

同団では3月11日にも、アフリカ系初のエトワールが誕生し、世界的ニュースになったばかり。昨年12月に就任した同団のジョゼ・マルティネス新芸術監督は、抜擢(ばってき)について仏フィガロ紙の取材に「全ダンサーを鼓舞し、仕事に集中する重要性を理解してもらうメッセージ」とコメントした。自身もスペイン出身の同団エトワールだった経歴もあってか、多様性への理解を示す。

オニール八菜さん、最高位に

ムーセーニュ・クララさん

パリ・オペラ座バレエ団の期待の新星、ムーセーニュ・クララさん(関勝行撮影)
パリ・オペラ座バレエ団の期待の新星、ムーセーニュ・クララさん(関勝行撮影)

一方、同団に付属するパリ・オペラ座バレエ学校在学中から注目されてきた逸材が、ムーセーニュさんだ。1月、若手ダンサー(24歳未満)対象のカルポー賞を受賞。同賞の過去の受賞者は、高松宮殿下記念世界文化賞受賞者のシルヴィ・ギエムさんらそうそうたる顔ぶれで、オニールさんも14年に受賞している。

「受賞を光栄に思います。私のこれまでの仕事や、日々の努力への評価に加え、今後の私の成長に強い期待を込めてくださった。過去の受賞者には、私が尊敬するダンサーが多くいらっしゃるので、受賞には大きな意味があります」 ムーセーニュさんは、フランス人医師の父と、母、貴子さんの間にパリで生まれ、ロンドン在住時は英ロイヤル・アカデミー・オブ・ダンスと日本人学校に学んだ。13年、オペラ座バレエ学校に入学すると、校内の最年少主演記録を次々と塗り替え、20年、オペラ座バレエ団に首席で入団。早速、「ラ・バヤデール」の影の王国のソリストなど大役でも評価され、昨年、早くもスジェ(5段階の上から3番目)への昇進を決めた。

新型コロナウイルス禍で思うように踊れなかった日々を味わっただけに今、踊る喜びにあふれている。

「ダンスへの情熱が私の原動力。毎日、ベストを尽くすことで、技術や芸術性を高められます。最高のパフォーマンスを届けられる機会に恵まれていることに感謝しています」

昨年夏、プロとして初めて日本で踊り、気品ある動きが注目を集めた。大きな期待が寄せられる18歳の勢いは、止まらない。

(飯塚友子)

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