岸田文雄政権が31日公表した「次元の異なる少子化対策」の試案は、児童手当の所得制限撤廃や出産費用の公的保険適用など多彩なメニューをそろえた。今後はいかに施策の優先順位を付け、財源を確保するかが焦点となる。政府内では増税ではなく社会保険料などで賄う案が浮上するが、国民負担の増加には反発も予想されるだけに、首相が衆院解散・総選挙に踏み切るタイミングにも影響しそうだ。
閣僚経験者は今回の試案について、「総花的で、統一地方選前のアピールも多い」と語る。学校給食費の無償化は政府内でも慎重論が根強かったが、自民党側が要望し、最終的に試案に盛り込まれた。
政府は試案のうち児童手当の拡充について、具体的な対象や金額、財源を含め、6月の経済財政運営の指針「骨太の方針」のとりまとめまでに結論を得る考えだ。ただ、児童手当の給付額は年間2兆円近くに上る。所得制限を撤廃すれば約1500億円、さらに子供が多い世帯への加算や支給年齢の引き上げを行うには、数兆円規模の財源が必要とされる。
首相は将来的な子供関連予算の倍増を打ち出したが、財源を消費税増税などで賄うことには否定的な考えを示してきた。
そこで、政府内で浮上しているのが、社会保険料や企業の拠出金などを財源に活用する案だ。政府高官は「首相の頭に増税はない。子供予算の財源は(法人税増税などで財源を捻出する)防衛費と違い、社会保険料など色々なものが考えられる」と語る。
自民党内には、教育に使い道を限定した「教育国債」を発行して財源にあてるよう求める声もある。
首相周辺は「財源をどうするかは年末に決めることになる」と打ち明ける。子供予算の財源を税でなく社会保険料で賄うとしても負担増になる企業や労働者の反発が想定される。
年末には防衛費増額に伴う増税の実施時期も決定する見込みだ。政府関係者は「年末に負担増の議論を行ってから、首相が解散に踏み切るのは難しいのではないか」と語る。(田村龍彦、村上智博)
出産費用に保険適用検討 少子化対策の政府試案公表 児童手当、高卒まで支給