政府が31日に公表した少子化対策の試案では、育児休業給付や保育士の配置基準など、現行からの引き上げや改善を図る具体的な数値が示された。子育て世代ら当事者の期待は大きいが一部で懸念の声も上がる。
男性の育休取得率では、令和7年に公務員で85%、民間で50%を目標値に据えた。民間は直近で14%を割っており容易ではないが、東京都内に住む会社員、高峰翠(あきら)さん(35)は「会社単位の理解浸透の取り組みを通じ、社会全体の雰囲気を変えていけば、達成できるのでは」とみる。
今年7月に妻(34)が第1子を出産予定。それに合わせ自身も育休を取得する。勤務先の明治安田生命では今年初めて、男性社員、配偶者のほか、社員の上司も対象にした育休セミナーを実施した。夫婦で参加した高峰さんは「職場一体で男性育休取得の必要性を共有できた」。実際の取得申請に際しても、ためらいはなかったという。
産後の一定期間内に最大28日間、男女とも育休給付を休業前の手取りの実質10割に増額することも示され、高峰さんは、こうした経済面のカバーは「強い後押しになる」と評価する。
さらなる改善を求める声もある。保育士の配置基準は、1歳児6人に保育士1人を充てる現行制を5対1に、4~5歳児の30対1を25対1にそれぞれ改める。
一方、都内で運営する保育園で1歳児18人に保育士4人、補助1人と手厚い態勢をとる社会福祉法人「育和会」の飯田由美理事長(68)は、それでも園児の安全確保などに向け職員らに余裕はないとし、担当する子供の数を「さらに減らすべきだ」と訴える。
低賃金を背景に、そもそも保育士は不足している。現場の保育士らの労働相談に当たる「介護・保育ユニオン」の三浦かおり共同代表(35)は、「早朝から夜間まで休みなく働き、月給が20万円に届かない正規の保育士もいる。処遇改善は急務だ」とした。
試案では両親の就労など要件を問わず、時間単位で保育所などを利用できる「こども誰でも通園制度」(仮称)の創設の検討も盛り込まれた。仕事を辞めて出産し、保育園への預け入れを諦めた経験を持つ女性(46)は「安心感を得られる家庭も多いと思う」と早期実現を求めた。