主張

民主主義サミット 中露に対抗へ結束示した

米政府などが主催する2回目の「民主主義サミット」が29、30日、約120カ国・地域の首脳らを招待して主にオンライン形式で開かれた。

参加したウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアのプーチン政権によるウクライナ侵略を「自由と民主主義に対する戦争だ」と断じ、「民主主義の敵は打ち破られなければならない」と訴えた。

その認識は正しい。

2021年12月の初会合では、香港における「一国二制度」を踏みにじり、台湾への軍事的威圧を強める中国をにらんで参加国・地域の結束を図った。

昨年2月のウクライナ侵略後に開かれた今回のサミットは、中露を軸とする専制主義勢力に対抗する自由民主主義陣営の団結に向けて、前にも増して重要な会合の場となった。

招待国が前回に比べて8カ国増えたことも、民主的価値観を共有する国々が専制勢力への危機感を共有している表れだ。台湾を前回に続いて招待したのも、台湾の民主主義を擁護していく姿勢を示すものである。

これに対し、中国の李強首相は30日、「集団による対抗や新冷戦に反対する」などと述べて反発した。台湾や中国国内の人権状況をめぐり、国際社会から強まる逆風への焦りにほかならない。

バイデン米大統領は今回のサミットで、中露の台頭をにらみ「私たちは歴史の転換点にいる」と指摘し、各国の民主的改革の推進への取り組みに6億9千万ドル(約910億円)を拠出すると表明した。米国が「民主主義諸国の盟主」としての指導的立場を改めて明確にしたことを歓迎したい。

サミットでは、人権尊重や汚職防止など民主主義の強化をうたった共同宣言が発表され、73カ国・地域が署名した。岸田文雄首相は「法の支配」に基づく国際秩序の維持と強化を訴えた。

一方、東南アジアでの米同盟国であるタイやシンガポール、北大西洋条約機構(NATO)加盟国のハンガリーやトルコは前回に続き招待されなかった。国内の政治・人権状況が問題視されたとみられるが、サミットは敵味方を峻別(しゅんべつ)するリトマス試験紙ではない。

日米などの先進民主主義諸国は、こうした国々に改善を促しつつ、中露への対抗に向け連携のあり方を探っていくべきだ。

会員限定記事会員サービス詳細