事業者向けの電力販売などでカルテルを結んだとして、公正取引委員会が30日、中部電力、中国電力、九州電力の3社側に課徴金納付命令などを出した独禁法違反(不当な取引制限)問題。関西電力の森望社長は大阪市で記者会見し、3社とのカルテルについて、当時社長の岩根茂樹氏ら首脳陣が関西外での営業活動の縮小方針を決め、前社長で当時副社長の森本孝氏が他社に持ちかけたと明らかにした。
「販売電力量や販売価格を最適化したいということで、営業戦略の検討を重ねた」
森本氏らが3社に営業活動の縮小方針を持ちかけた理由について森氏は、電力自由化を受けて、平成29年ごろから電力大手同士が他社の管内で営業活動を行う流れが進み、電力の販売価格が低下していたことが影響したとした。そこで30年の夏から秋にかけて関電の営業、企画部門による戦略策定会議を行い、「(関電の)管轄外への営業活動を縮小する方針が決定された」と明かした。
会議では、当時の社長の岩根氏や前社長の森本氏、副社長だった弥園(みその)豊一氏らが営業縮小の方針を決定し、森本氏自ら中国、九州電力に伝達。中部電には川崎幸男常務執行役員=当時=が伝えた。同会議がカルテルの呼び水になったとみられる。
一方で、関電の呼びかけを受けて、他社がどのような反応をしたかを巡り、会見で何度も質問を受けた森氏は「他社の行為なので言えない」と繰り返し、カルテル合意の詳しい経緯や内容については言及を避けた。
森本氏はその後、令和2年3月に社長に就任。4年6月に社長を退任し、現在は関電の特別顧問を務めている。森本氏が社長を退任したタイミングは、3年4月と7月に公取委が今回の事案をめぐり関電への立ち入り検査を行った後のことで、カルテルとの関連も疑われているが、森氏は「(退任の理由は)社内の経営陣の若返りの趣旨だった」と説明した。
関与した旧経営陣の処分については、社外弁護士らでつくるコンプライアンス委員会の助言を受けて判断するとした。森氏自身の辞任は否定し、「私の責任は今回のような事態を二度と起こさないために、法令順守の徹底や組織風土の改革を進めることだ」と述べた。(黒川信雄、牛島要平)