パナソニック、冷凍で食品を乾燥させる新技術でフードロス削減へ

常圧凍結乾燥させた雑炊(パナソニックホールディングス提供)
常圧凍結乾燥させた雑炊(パナソニックホールディングス提供)

パナソニックホールディングスは30日、新たな食の価値提供やフードロス削減に向け、冷凍によって食品を乾燥させる「常圧凍結乾燥技術」を発表した。京都大などとの実験では従来の乾燥技術に比べて栄養が高く含まれていることが確認されたという。大学などと連携してスタートする「未来の食プロジェクト」の第1弾で、今後この技術を活用したレトルト食品の販売などを予定している。

凍った食品の水分を取り除くことで食品を乾燥させる常圧凍結乾燥技術では、従来の熱風乾燥と違って栄養成分の変化が少なく、フリーズドライと異なりしっとりした食感になるのが特徴。共同研究した京都大などとの実験では熱風乾燥と比べてキウイのビタミンCが1・5倍になることが確認されたといい、京都大大学院の中川究也准教授は「フリーズドライのように真空状態で複雑な管理が必要なく、香りや食感に特長がある乾燥食品が作れる」と話す。食品によっては常温で1カ月保存可能で、フードロス削減につながることが期待されるという。

フードロス削減に向けた取り組みは、ほかの企業でも進められている。東芝グループは1月、サッポロホールディングスなどとともにスマートフォンアプリによるフードロス削減の実証実験を行った。電子レシートサービスを活用して購入した食品のデータをアプリに登録すると、フードロスが起きないようレシピや食生活の改善が提案される仕組み。アプリからの提案を達成すると、連携するスーパーで使えるポイントが付与される。

東芝データの担当者は「モニターとして参加した100人からは『食品を捨てる量が減った』との意見が寄せられており、今後サービスを提供する予定」としている。

シャープは1月から食材を使いきることをコンセプトにした冷蔵庫の新製品を発売。モノのインターネット(IoT)機能を使って残った食材を登録すると、賞味期限が切れる前に最適なメニューを提案してくれる。

農林水産省によると、令和2年度の日本のフードロスの推計値は522万トンで、平成24年度以来最小となっている。(桑島浩任)

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