東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件を巡り、贈賄罪に問われた出版大手「KADOKAWA」の元五輪担当室長、馬庭(まにわ)教二被告(63)の30日の初公判。「法律を超えた存在だった」。検察側は、複数の同社関係者の供述調書を証拠として提出し、前会長の角川歴彦(つぐひこ)被告(79)=贈賄罪で起訴=の社内での立場を詳述した。
賄賂になる危険性を認識しながら、大会組織委員会元理事の高橋治之(はるゆき)被告(78)=受託収賄罪で4回起訴=への支払いを続けた背景に、創業家一族である角川被告のワンマンぶりがあったことが浮かんだ。
事件当時、角川被告は会長ではあるものの、代表権のない取締役に過ぎなかった。ただ、「社内では言うことに従う空気があった」(元幹部)と、その意向に誰も逆らえない雰囲気があったという。
大会スポンサー契約締結を巡り、高橋被告側から要求された資金提供が贈収賄になる可能性があると報告を受けた際も、「世の中そんなもの」などと発言。
その後も逡巡(しゅんじゅん)する馬庭教二被告に対し、「君はやりたいのか、やりたくないのか?」と問い詰め、馬庭被告は「このまま(高橋被告側への支払いを)進めたいです」と応じたという。
その様子を見ていた社員は、検察側の調べに「(馬庭被告は)苦虫をかみ潰したような苦悶(くもん)の表情を浮かべていた」と供述した。