名古屋市中区で24日、マンション7階から2歳の双子男児が転落死する事故が起きた。双子は窓付近に置かれた約80センチの棚をよじ登って自ら鍵を開錠し、転落した可能性が高く、事故防止対策の必要性が改めて叫ばれている。例年、窓を開ける機会が増える春と秋に同種事故が集中しており、暖かくなる季節を控え、専門家は「換気の際でも、窓に(開閉防止用の)ストッパーを使用してほしい」と注意を呼び掛けている。
厚生労働省の人口動態調査を基に消費者庁が分析した統計によると、平成28年~令和2年の5年間で、建物からの転落により9歳以下の子供が死亡した事故は21件起きた。年齢別では3歳と4歳が最も多かった。
また、東京消防庁のまとめによると、平成29年~令和3年の5年間で、住宅の窓やベランダから転落して救急搬送された5歳以下の子供は62人。転落した場合、けがの程度は重大で、高層階だけでなく、2階からの転落であっても、85・7%が入院が必要とされる中等症以上と診断された。
小さい子供でも身体能力は高く、事故は一瞬の隙に起きる。例えば、ベランダは建築基準法で手すりの高さが110センチ以上と定められているが、自分で椅子を持ってきたりするなどして、簡単に手が届いてしまうのが実情だ。
昨年11月には千葉、大阪、青森のマンションで2~4歳の男児が相次いで死亡。青森県の市営住宅で10階から男児(4)が転落した事故ではベランダに室内にあったパイプ椅子が置かれており、自ら移動させたとみられる。男児(2)が高層マンションから転落した千葉県の事故でもベランダに折りたたみ式の椅子があったという。
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事故を防ぐにはどうしたらよいのか。
政府は窓やベランダからの転落を防止する主な対策として、子供が勝手に窓を開けないよう子供の手が届かない位置に補助錠を付けたり、足場になるような物を片付けたりすることを推奨している。
NPO法人「Safe Kids Japan」の大野美喜子理事は、「子供がいろいろできるようになる前に対策をとる必要があるが、1人目の子供の場合、事故の予測がかなり難しい」と指摘する。
子育てで親が常に目を離さないようにすることは難しく、大野理事は親が気を付けるという発想からの転換が必要と強調。「保護者だけで対策をとっても限界がある。子供が窓に近づくと反応するアラームの設置などを行政が手助けしてくれれば」と訴える。
東京消防庁の統計では救急搬送された62人のうち、5月が17人と最も多く、次いで10月が9人となった。換気がしやすい季節であることが要因の1つとみられ、大野理事は「窓が10センチ程度しかあかないようにストッパーを使用すれば、子供の転落を防ぐことも、換気もできる」と推奨した。
行政側も子育て世代に向けた支援を行っており、国土交通省は3年度から賃貸住宅や分譲マンションを対象に、事故防止のための改修などの整備に要する費用の一部補助を開始。転落事故などの防止設備の設置費用のうち、100万円を上限として、新築住宅では10分の1、住宅改修は3分の1を補助する。(吉沢智美)