ロシアの軍事産業に関する国家機密を米国の指示で不正取得しようとしたとして、露治安機関「連邦保安局」(FSB)は30日、スパイ活動容疑で、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)のモスクワ特派員、エワン・ゲルシュコビチ記者を露中部エカテリンブルクで拘束し、刑事訴追手続きを開始したと発表した。タス通信が伝えた。
ゲルシュコビチ記者は米国籍。同記者が実際に「スパイ活動」をしていたのか、通常の取材をFSBがスパイ活動と認定したのかは不明。同記者の拘束で米露対立の先鋭化は確実だ。
WSJは30日、「FSBの主張を強く否定する。ゲルシュコビチ記者の即時解放を求める」との声明を発表した。一方、露外務省のザハロワ報道官は、同記者が「特派員の肩書を隠れみのに報道とは無関係の活動をしていた」と主張した。
拘束が発表される数時間前には、エカテリンブルクでゲルシュコビチ記者の取材に協力したという男性が「彼と連絡が取れなくなった」と交流サイト(SNS)で明らかにしていた。男性によると、同記者は露民間軍事会社「ワグネル」に対する露社会の反応を主に取材していたという。エカテリンブルク近郊の軍事工場が所在する都市を訪れていたとする情報もある。
ロシアはウクライナ侵攻開始後、対露制裁を発動した欧米諸国や日本を「非友好国」に指定。非友好国の報道機関に対し、通常1年以上の特派員のビザ(査証)を3カ月に短縮するなど報道圧力を強めている。