安倍晋三元首相銃撃事件で、奈良地検は30日、殺人罪などで起訴されている山上徹也被告(42)について、事件前日に世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関連施設に手製銃を発砲した建造物損壊や武器等製造法、火薬類取締法、銃刀法違反の罪で追起訴した。安倍氏を銃撃して選挙活動を妨害したとする公選法違反容疑は嫌疑不十分で不起訴とした。地検は不起訴処分について「捜査を尽くし、個別事情を考慮した結果、立証するに足る十分な証拠がない」とした。
銃撃事件を巡る一連の捜査は発生から8カ月超を経て終結した。すでに起訴された殺人罪などと併せて、争点を整理する公判前整理手続きを経て裁判員裁判で審理される見通し。
起訴状などによると、山上被告は令和2年12月20日から銃撃事件当日の昨年7月8日にかけ、奈良市内の自宅などで手製のパイプ銃など6丁や黒色火薬を無許可で製造・所持。3年12月~昨年6月には市内の資材置き場でベニヤ合板に向けて試し撃ちしたほか、事件前日の昨年7月7日午前4時ごろには、同市内の教団関連施設が入るビルに向けて発砲し外壁を損壊させたりしたなどとしている。
安倍氏は昨年7月8日午前11時半ごろ、奈良市の近鉄大和西大寺駅前の路上で演説中に銃撃されて死亡した。奈良県警が殺人未遂容疑で山上被告を現行犯逮捕し、殺人容疑などで送検。同月25日から約半年間の鑑定留置を経て、地検は今年1月13日、殺人と銃刀法違反の罪で起訴した。2月13日には、県警が公選法違反を含む5つの容疑について追送検していた。