公正取引委員会が30日、中部、中国、九州の大手電力3社などに過去最高の約1010億円の課徴金納付命令を出したのは、電気料金を抑制する「電力自由化」を揺るがす悪質な行為と判断したためだ。大手電力の業界団体「電気事業連合会」への出向経験者らが同会の会合に合わせて意見交換していたことも判明。大手電力7社が経済産業省に申請中の家庭向け電気料金(規制料金)の値上げ審査にも影響しそうだ。
「電力自由化の目的、理念をないがしろにする違反行為だ」。30日の記者会見で公取委の田辺治審査局長は厳しく批判した。
公取委によると、中部、中国、九州の3社は違反を申告する課徴金減免(リーニエンシー)制度で納付を全額免れた関西電力との間で、それぞれ平成30年11月ごろまでに利益確保のため、互いに相手の管内で営業活動を制限することに合意したとされる。各社の担当者は、電事連の会合で東京に来る前後で別途集まり情報交換。役員級から部長級や課長級など幅広い層が関与したと認定した。
このため、公取委は電事連の池辺和弘会長(九州電力社長)に対し、会員各社が違反行為を行わないように周知徹底と再発防止を求める書面も交付した。
大手電力を巡ってはカルテル問題に加え、送配電子会社が保有する新電力会社の顧客情報や、経産省が管理する再生可能エネルギー事業者の登録情報の不正閲覧も明らかになっている。
各社は一連の不正と値上げ申請の審査は直接の関係はないとしている。だが、審査で経産省と協議する消費者庁の幹部は、不正の検証を優先しなければ協議に応じない可能性を示唆しており、各社には信頼回復と再発防止策に取り組む姿勢を強く打ち出すことが改めて求められる。(永田岳彦)