来年4月から使われる小学校教科書の検定結果が公表された。社会では領土に関する記述が充実した。道徳では、国を愛する態度を育むよう内容が留意された。
戦後教育で疎(おろそ)かにされてきたことだ。国の歴史や文化を深く知り、国に誇りを持って学べる授業につなげてほしい。
社会では領土について学ぶ5年生用で全ての教科書が北方領土や竹島、尖閣諸島について、わが国の「固有の領土」と明記した。
北方領土の択捉島が割愛された地図に検定意見がつき、同島が描かれたものに修正された例もあった。北方四島の面積の6割以上を占める択捉島は、沖縄本島の2・6倍もの広さがある。きちんと認識しておくべきだ。北方領土はロシアに、竹島は韓国に不法占拠されている実態を含め、まず教員が歴史的経緯を理解して、子供たちに分かりやすく教えてほしい。
6年生用では、ロシアのウクライナ侵攻について取り上げた教科書もあった。教員はロシアが国際法を踏みにじって侵略し、ウクライナの人々が命懸けで国を守る現実を理解しているだろうか。
現行の学習指導要領では、子供たちに考えさせる教育に重点が置かれ、教科書もそれを踏まえて工夫がみえるが、指導力が問われることはいうまでもない。
道徳は教科化され、小学校では平成30年度から検定教科書が使用されている。指導要領では例えば5・6年生で「我が国や郷土の伝統と文化を大切にし、先人の努力を知り、国や郷土を愛する心をもつこと」と記されている。検定では、姫路城の平成の修理などを扱った箇所で意見がつき、日本古来の木組み技術と人々の努力で城が守られてきたことが分かりやすく書かれた内容に修正された。
また、3・4年生用では祭り行事の文章に関連して「住んでいる地いき」の好きな所を尋ねる箇所に意見がつき、「住んでいる地いきや日本」の良い所を尋ねるものに改められた。道徳の検定では、このように申請段階で地域や郷土への言及にとどまり、「国」が抜けた教科書が目立った。
検定を「愛国心の押し付け」などと批判するのは的外れだ。生まれ育った国を築き守ってきた先人の苦労を知り、愛国心を育むのは自然なことである。自分の国を知ることは、他国の歴史や文化を尊ぶことにもつながる。