先日、引き出しを整理していたら、手作りの布マスクがたくさん出てきた。「懐かしい」と手がとまった。白いガーゼ素材のもの、パイナップル柄の派手なもの、パッチワークの小花柄などさまざまだ。コロナが流行し始めた3年前に自作したり人からもらったりと自然と増えていったものだった。
その頃、ドラッグストアをはしごしてもマスクは全然手に入らなかった。そこで布マスクを自作することにした。布は家にあるもので何とかするとして、ゴムがない。手芸用品店へ行き探すが、売り切れて、なかった。
すると会社の有志の方がマスクの型紙と生地、ゴムを希望者に提供する取り組みを始めた。これはありがたいと早速送ってもらった。初作品は白のポリエステル生地を両面合わせたシンプルなものだった。ちゃんと形になったのがうれしくて、完成品をスマホで撮って母に見せた。やっと自分のマスクが手に入ったのだった。
緊急事態宣言が出て、2カ月間にわたり在宅勤務を余儀なくされた。家で一人パソコンに向かい孤独を味わう中、マスクづくりはささやかな癒やしであった。息苦しくないよう素材や形を工夫した。母もかわいいプリント柄などで作って、数回送ってくれた。
今は安くて機能的な不織布マスクがどこでも買える。思い切って布マスクは処分することにした。が、初作品は捨てられず、再び引き出しにしまった。再びこれを見つけるとき、私はマスクをしていないかもしれない。
堀口園子(50) 堺市西区