米バイデン政権 対中包囲へEV戦略軌道修正

米ワシントンにあるホワイトハウス=2月(共同)
米ワシントンにあるホワイトハウス=2月(共同)

バイデン米政権は昨年8月に成立させたインフレ抑制法の電気自動車(EV)優遇策を巡り、日本企業も恩恵を受けられるよう軌道修正を図り、中国などに依存しない強固なサプライチェーン(供給網)構築を進める。国内産業の育成を重視するバイデン政権だが、同盟国の日本と協力することで、対中包囲網とEV産業強化の両立を図る狙いだ。

昨年11月の中間選挙前に成立したインフレ抑制法は、物価高への不満が募る市民に対しEVや太陽光パネルの優遇策などで生活負担を軽減し、国内産業の育成を重視する対策が並ぶ。バイデン大統領は同法で「米国の家庭に繁栄をもたらす」と強調していた。

日本は、自国企業が不利な競争を強いられるとして反発。バイデン政権が主導する新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」で中国に依存しない供給網構築を目指す姿勢と、「整合性のとれない状態に陥っていた」(日米関係筋)。

日本政府は「IPEFの戦略に沿わない」と米国への説得を続け、優遇策が「日本企業の投資を躊躇させる」との懸念も伝えるなど柔軟な対応を求めた。バイデン氏は昨年12月、EV優遇策を見直す考えを示し米政府内で調整が進められてきた。

インフレ抑制法に対応しようと欧州メーカーが米国に生産拠点を移す間隙をつくように、中国メーカーは欧州のEV市場への進出を強めている。EVに占める生産コストの多くを占め、急速に技術開発が進むバッテリーの生産での競争は激しい。バイデン政権は日本と同じく要件緩和を求めている欧州とも交渉を進めているとみられる。同じ価値観を持つ国々との連携で、EV時代の経済安全保障を構築していく姿勢だ。(ワシントン 坂本一之)

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